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東京五輪金メダル最有力の喜友名、空手発祥の誇り胸に

東京五輪で初めて実施される空手はメダル量産が期待できる有望競技。なかでも金メダルに最も近いといわれるのが男子形の喜友名諒(29、劉衛流龍鳳会)だ。一糸乱れぬ演武は力強く、見る者を圧倒する迫力がある。

男子形の喜友名は2019年に出場した全ての大会で優勝するなど、圧倒的な強さを誇る=共同

那覇市内にある劉衛流の道場。一歩足を踏み入れると私語も挟めぬ緊張感が張り詰める。汗がほとばしり、空気を切り裂く音、気合が入った声が響く。すでに東京五輪代表を確実にしている喜友名は、この一瞬の隙も許されない空間で鍛錬を積んできた。

相手がいる組手と違い、1人で行う形は演目に沿って突きや蹴りを披露して完成度を競う。演武の一挙手一投足にキレがあり、やるかやられるか、見えない敵と本当に戦っているようだ。「形には昔ながらの技が隠されている。そこを追求する楽しさがあるし、その人自身が表現される」。武道である空手には内面性もにじみ出てくるといい、心技体をそろえなければいけない。5歳で空手と出合ってから、その魅力にとりつかれてきた。

2018年に世界選手権3連覇。19年は出場した全ての試合を制した。ゆったりした動きから繰り出す技は鋭く、パワフルでありながら繊細さも持ち合わせる。多種多様な流派が存在する中で斜めに移動するジグザグな足運びや攻撃と防御が一体化している劉衛流の特徴を会得していることも、世界から高い評価を受けている理由だろう。

空手発祥の地、沖縄を拠点とし、師匠の佐久本嗣男(左奥)と稽古に励む(那覇市)

無類の強さは中学3年から師事する佐久本嗣男氏との厳しい稽古が土台になっている。19年の全日本選手権では28.32点で史上最多に並ぶ8連覇を成し遂げたが、1980年代に世界選手権3連覇している師匠は「そこで満足してはダメ。満点(30点)近く取って初めて勝ったといえる」と、簡単に褒めてはくれない。

技と技のつなぎ目など細部にこだわってこそ一流。相手を威圧するような目力は鏡の前で自分とにらみ合うことで養い、時にはリズムやスピードの強弱を学ぶために太鼓をたたいた。演武と演舞は異なるが、琉球舞踊も参考にする。空手を極めようとする姿は求道者の趣がある。

大会では最大4種類の形を演武する必要があるが「どの形でも勝てる自信がある」。佐久本氏によれば、劉衛流を代表する「アーナン」「オーハンダイ」といった「原点」の形に磨きがかかってきた。

金メダル最有力と期待する周囲の声も「世界一の先生のもとで稽古できている」自負があるから重圧には感じていない。なにより、空手発祥の地、沖縄出身の選手としての誇りがある。「五輪では1人でも多くの人を勇気づけたい。金メダルを取ることは沖縄空手の歴史の中で自分にしかできないこと」。初めて臨む五輪は、そんな使命感を宿して恩師と二人三脚で挑む舞台でもある。(渡辺岳史)

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