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渋野日向子「謎」→「進」 進化と世界進出の一年に
編集委員 串田孝義

2020/1/3 3:00
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20歳の年に「人生が変わった」。昨年8月の全英女子オープンで日本勢42年ぶりの海外メジャー制覇をなし遂げたプロゴルファー、渋野日向子が迎えた2020年は、夏の東京五輪への出場と金メダル奪取の野望を抱く。「謎」の19年から20年は「進」の1字に思いを込める。その心は、進化を遂げて五輪へ、そして世界進出――。

「東京五輪で金メダルを取るところを日本の人たちに見てもらえるのはメチャクチャ格好いい」と渋野

「東京五輪で金メダルを取るところを日本の人たちに見てもらえるのはメチャクチャ格好いい」と渋野

渋野の脳裏に深く刻みこまれた五輪の思い出は、08年北京五輪のソフトボール日本代表の金メダルであり、「上野の413球」につきる。当時、小学生の渋野はソフトボール少女で、日本のエース右腕、上野由岐子に憧れる投手だった。

「決勝戦を家のテレビで見ていた。小3からピッチャーを始めていて、上野さんの投球映像をスロー再生で見るとか、父と一緒にやっていた。金メダルの瞬間の選手のみなさんの表情が私にとって一番のオリンピックの記憶。いつか自分もこういう経験をしてみたいと強く思った」

ところがソフトボールは北京大会を最後に五輪競技から外れ、3大会ぶりに20年東京大会で復活する。ソフトがずっと五輪競技であり続けていたら、アスリート渋野の歩む道もまた違ったものになっただろう。

「(ソフトの五輪除外の)影響はあったといえばそうかもしれない。ソフトボール部のある中学に進む話もいただいていたので。結局中学では最初、野球とゴルフを両立してやっていて、中1で岡山県ジュニアで初めて優勝を経験。プロゴルファーになりたいという思いが芽生えた」

「父も学生時代、陸上競技をしていて国体などにも出ている。五輪はスポーツの夢の舞台。そこに出て、一番喜んでくれるのは家族だと思う。それぐらい我が家ではスポーツが身近にあった」

五輪に畑岡・鈴木と「3人で出たい」

昨夏の全英女子制覇で世界ランクが急上昇。それまではソフトボールの応援に行くつもりだった自国開催の東京五輪が、自分も出る大会として現実味を一気に増した。19年末の世界ランキングは11位。上には6位の畑岡奈紗、下には15位の鈴木愛がいる。今年6月末の世界ランクで全員が15位以内に入れば3人出場、一人でも16位以下なら上位2人が出場となる。

「(使用クラブメーカーが同じ)愛さんからもPINGのファン感謝デーで『3人で選ばれるように』と言ってもらえた。ゴルフは個人戦だけれど、同じ日本代表。2人よりも3人の方がメダルのチャンスは増える。3人で出たい。そのために6月末までの試合は一つも無駄にできない。海外、国内でメジャー大会もある。一試合一試合しっかりと結果を出さないと。予選落ちしていると必ずランクは落ちる」

「まだ選手にもなっていないけれど、五輪でめざすのは金メダル。北京の上野さんを見て、私も強くなって一番を取りたいと思ったのが原点だから。東京五輪で金メダルを取るところを日本の人たちに見てもらえるのはメチャクチャ格好いい。全英優勝以上のインパクトがあるんじゃないか」

20年を「進」の一年にしたいという渋野

20年を「進」の一年にしたいという渋野

「(つい5、6年前の)自分のころと比べてもジュニアの試合の出場人数は少なくなっているし、ゴルフ人口は間違いなく減っている。五輪金メダルというしっかりとした結果を出していろんな人にゴルフを知ってもらい、シブコさんに憧れてゴルフを始めました、と言ってもらいたい」

「男女を通じて日本人でただ一人、世界ランク1位になったのが(10年の)宮里藍さん。子供心にそのニュースをしっかり覚えていて、藍さんの活躍をテレビで見ていた世代が自分たち。藍さんのように次世代にインパクトを与える存在になれたらいいなあ」

持ち前の攻め気のゴルフを「進化」させて東京五輪で活躍、そこを踏み台に21年からは米女子ツアーに「進出」する気持ちを固めたのが昨シーズン終盤戦のことだった。

「(昨年10月の)日本女子オープンで奈紗ちゃん、柳簫然さんと一緒に回ってレベルの差を感じた。そして2人が英語で話しているのがうらやましかった。世界レベルの一端に日本で触れることができて、『世界ってすごいんだろうな』とそこから思うようになった」

5大メジャー全制覇のため早く海外へ

とはいえまだまだ世界で戦う覚悟の定まっていなかった渋野。そんな渋野の背中をぐいと押したのが昨年秋の台湾での試合の夜、師事する青木翔コーチからかけられた言葉だった。その頃は常時マスク着用、普段着で外出することもままならなくなっていた日本を離れ、ゴルフへの向き合い方を落ち着いて見つめ直す機会となった。

「当時、表向きは賞金女王を目指しますとコメントしていたけれど、実はそこまでの思いはなかった。シーズンをともに戦いながら一緒の試合で勝ったことがなかった定由(早織)キャディーと優勝したい、というその一心。集中力というか、試合に向かう気持ちの揺れを見抜いたコーチにそこをズバッと指摘され、あと残り4試合、早織さんと勝ってみろよと言ってもらい、やっと目標が落ち着いて最後まで頑張れた」

「その時、『やめるなら(ANAインスピレーション、全米女子オープン、全米女子プロ、エビアン選手権、全英女子の)海外5大メジャー全部勝ってからにして』とも言われた。勝ったら引退していいよ、と。何言ってんだ、この人と思ったけれど、一つ勝ったから『お前が日本人では一番近いんだぞ』と言われると、じゃあそれを達成するには早く海外に行かないと無理だなと切り替わり、20年は1年かけて覚悟を決めようと」

「19年は人生が変わった1年。海外も含めて年間5勝もできたけれど、技術はまだまだ。いい意味でずぶとく最後まで走り切れたのがよかった。全英優勝のあと、2勝できるなんて思っていなかった。その意味で大きかったのは(定由キャディーと組んだ)大王製紙エリエールの優勝。1年間でちょっとは強くなれたかな、と思えた。20年は強気な自分、攻めの気持ちは忘れず、足りないところをレベルアップしてまた新たな自分で迎えたい」

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