高度成長の陰、消えた貧困調査 時代超え課題いまも
1964→2020(7)
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前回東京五輪から2年後の1966年。貧困に関する国のある調査がひっそりと姿を消した。
「低消費水準世帯」の推計調査。厚生省(現厚生労働省)が戦後、消費水準が生活保護世帯の平均を下回る層をこう位置付け、増減を調べてきたものだ。最後となった65年は約153万世帯。全世帯に占める割合は、10年前の10.8%から5.9%に下がっていた。
時は高度成長期。国民総生産(GNP)は68年に西ドイツを抜き、世界2位に躍り出る。社会の視線は低い方よりも高い方を向いていた。
「なぜだろう」。北海道大の松本伊智朗教授(60)は北大3年だった81年、教育学部のゼミで貧困に関する論文を読み、低消費水準世帯の調査打ち切りに素朴な疑問を抱いた。それがきっかけで貧困問題の専門家の道へ。打ち切りの詳細な理由は不明だが、...
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