福島第1原発の廃炉、見えぬ最終形 工程表改定 - 日本経済新聞
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福島第1原発の廃炉、見えぬ最終形 工程表改定

政府は27日、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉工程表を改定した。事故後30~40年にあたる2041~51年に廃炉を終える目標を堅持したが、すでに9年弱が過ぎたうえトラブルで作業の遅れも目立つ。もっとも厄介な溶融燃料(デブリ)の性質や量は分かっておらず、取り出し技術も確立されていない。目標の実現性や廃炉の最終的な姿は見えないままだ。

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工程表の改定は2年ぶり5回目。31年末までに1~6号機の原子炉建屋の使用済み燃料プールに残る核燃料を、全て取り出す目標を新たに設けた。ただ、取り出し開始時期は最大5年遅れ、1号機は27~28年度、2号機は24~26年度とした。

取り出しは簡単な作業ではない。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「野心的な計画だ」と話す。問題は炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機だ。

先行して19年4月に始まった3号機は当初、14年末開始予定だった。作業員の被曝(ひばく)を避けるため、なるべく遠隔操作で取り出す必要があり、用意に時間がかかったからだ。566体のうち7月までに28体を取り出したが、機器のトラブルで最近まで止まり、作業は遅れている。

1号機は水素爆発の影響が大きい。原子炉建屋の天井が吹き飛び、核燃料が入るプール上部の床に約1100トンのがれきなどが散乱する。取り除こうとすると放射性物質を含むチリが舞い上がる恐れがある。避難指示の解除で進む住民の帰還にも配慮する必要がある。

そこで今回の改定で、建屋に大きなカバーをかける大規模工事をすることになり遅延要因となった。水素爆発のなかった2号機では、高い放射線量が作業を妨げている。

取り出しの遠隔操作は難しく、全号機を31年までに終えられる保証はない。さらに廃炉作業で最大の難関といわれるデブリの取り出しを並行して進めなければならない。

今回の改定では、21年に2号機からデブリを取り出すと明記したが、完了時期や1、3号機からの取り出し開始時期は示さなかった。日本原子力学会福島第1廃炉検討委員会の宮野広委員長は「取り出し技術は確立されていない」と指摘する。

これまでの廃炉作業の遅れもあり、41~51年の廃炉完了は困難と見る専門家は多い。高い放射線を出し、再び核反応を起こす可能性も残るデブリを安全に取り出し、保管しなければならないが、その方法もこれからだ。

さらに廃炉によって生じる廃棄物の処分という問題が残る。更田委員長は「デブリ取り出しは技術的に大変難しいが、ひょっとするともっと難しい問題」と指摘する。福島県など地元自治体は県外への搬出を求めているが、めどは立っていない。

そもそも政府や東電は、何をもって廃炉完了というのかを明らかにしていない。一般の原発のように建物を解体して更地に戻すのか、建物などが残るのか。その姿は工程表にはない。廃炉の技術戦略を立てる原子力損害賠償・廃炉等支援機構は「廃炉の最後の目標を決めるにはデブリなどの情報を十分得る必要がある」とするが、それがいつになるのかは見えない。

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