ネタニヤフ首相が党首選勝利、起訴後も党内支持強く
【カイロ=飛田雅則】イスラエル与党の右派リクードが26日実施した党首選でネタニヤフ首相が勝利し、収賄などで起訴された後も党内で根強い求心力を保っていることを印象づけた。同氏は首相続投を目指し、2020年3月に1年間で2度目のやり直し総選挙に臨む。国民からの批判をかわすため、パレスチナなどの対外的な問題で強硬姿勢を強めそうだ。

現職のネタニヤフ氏に挑んだサール元内相は敗北を認めた。サール氏は11月にネタニヤフ氏が起訴されたことで、党執行部に党首選の実施を求めていた。
党首選で得票率が72.5%に達したネタニヤフ氏は「多くの国民が私と右派を支持してくれた」と演説した。通算13年以上の首相としての実績を訴えた。起訴されたが、外交などの実績を評価する声は党内で強い。トランプ米政権は米大使館をエルサレムに移転させ、パレスチナのヨルダン川西岸へのユダヤ人入植地活動を容認した。ネタニヤフ氏が親密な関係のトランプ氏に働きかけたのが功を奏したと党内ではみられている。
ロシアのプーチン大統領とも良好な関係を築いたうえ、最近では中国に接近し投資の呼び込みに成功した。支持者は「米中ロの大国と渡り合えるのはネタニヤフ氏だけだ」と主張する。
あるリクード支持者は「党首への忠誠は伝統だ。有罪が確定していないネタニヤフ氏に反対票を入れるのは裏切りだ」と結束の強さを指摘する。同党は1970年代の結党以来、ネタニヤフ氏を含めて4人しか党首経験者がいない。汚職問題を抱えながら臨んだ2019年の2度の総選挙でも、30を超える議席を獲得した手腕を評価する声が多い。
イスラエルでは9月のやり直し総選挙後、リクードのネタニヤフ氏と、中道野党連合「青と白」のガンツ元軍参謀総長が大連立を模索した。だが、首相続投を目指すネタニヤフ氏と、退陣を求めるガンツ氏の溝が埋まらず、1年足らずで3度目の総選挙が20年3月に実施されることになった。
世論調査では起訴されたネタニヤフ氏の辞任を求める意見が半数を超えた。3月の総選挙は逆風にさらされそうだ。イスラエルでは安全保障が国民の最大の関心事であるため、ネタニヤフ氏はパレスチナのガザ地区や敵対するイランへの脅威をあおり、強硬姿勢を示して支持基盤を固めるとみられる。党首選後には「イスラエルがすべての入植地を管理することについて米国の承認を求める」と語った。地域の混乱が一段と拡大する恐れがある。