スマホ片手に、ふらっと海外 解き放たれた旅行者
1964→2020(5)
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2019年12月6日、金曜の夜。広告代理店で働く東松寛文さん(32)は勤務を終えると、スーツにリュックサック姿で成田空港に向かった。
行き先はハワイ。便は午後9時半発だ。空港到着は搭乗手続き締め切りギリギリになったが、仕事の疲れも見せず保安検査場に駆け込んだ。
週明けの9日に帰国した東松さん。「金曜の退社後から月曜の出勤前までを目いっぱい使えば、週末の自由時間は3日間近い。アジアやオセアニアなら国内と変わらない」と事もなげだ。
週末や有給休暇を使い、これまで約70カ国、約150都市を訪れた。16年10月~17年1月には5大陸18カ国を回る"世界一周"も敢行した。
19年5月に訪れたインドの街、アムリトサルの光景が忘れられない。パキスタンとの国境近くで国境警備の両国の軍隊が毎夕、何千人もの群衆の見守る前でパレードを行い、両軍が握手を交わす。国歌が流れ、まるで応援合戦だった。
これまでニュースで目にした両国関係は、長年の対立のことばかり。だが最前線を直接見た印象は違った。「国家という存在と、住む人の生き方は全く別だった。日本にいては分からないことを考えさせられた」