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中国、海外港湾に1.2兆円投資 国有2社、一帯一路先導

【大連=渡辺伸】中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を軸に、海外で港湾の買収・出資を積極的に進めている。日本経済新聞社が独自に集計したところ、過去10年間の投資先は少なくとも18カ国・25案件に上り、総投資額は1兆2000億円に達していることが分かった。中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)など国有大手2社によるものが大半で、構想の「先兵役」を担っている。出資を巡り法廷闘争などのトラブルも抱えるが、構想は着実に前進している。

上場企業の発表資料など公開情報を基に独自に調査し、集計した。2010年から直近の19年12月までの過去10年間の案件を対象とした。海外の港湾の買収もしくは出資した25案件(一部、計画段階のものを含む)のうち、中国港湾運営大手の招商局集団(チャイナ・マーチャンツ)が11件(他企業との一部重複含む)を占め、最多だった。

2番目に多かったのは、中国海運最大手のコスコで9件。国有2社合計で20の案件を手掛け、大半を占めていることが分かった。直近でも2社の動きは活発だ。

コスコと商招局、先兵に

「我々は(ギリシャ最大港の)ピレウス港を、欧州最大の港に成長させることができる」。コスコは11月、同港に6億ユーロ(約720億円)を追加投資することでギリシャ政府と合意し、経営トップの許立栄董事長は自信満々にこう意気込んだ。

というのも、同社は08年に地中海の海運の要衝であるピレウス港の一部運営権を取得したのをきっかけに、事業を順調に拡大してきた。16年には同港の運営会社に51%を出資することに成功し経営権を取得した。貨物の取扱量も順調に増え、18年は13年比で75%増となり、今回の投資でさらに港の拡張を狙うという。

中国にとってピレウス港は、特に魅力だ。以前は中国から船便で西欧や北欧に家電や衣料品などの中国製品を運ぶためには、南シナ海からインド洋・スエズ運河を通り、スペインとモロッコの間にあるジブラルタル海峡を抜ける航路が多かった。だが「ピレウス港の整備が進んだことで、積み荷を同港で揚げ、鉄道輸送に切り替え、欧州各地の客先への納入時間を大幅削減できるようになった」(関係者)という。

一方の招商局も11月下旬、海外の港湾に9億5500万ドル(約1000億円)を投じる大型買収を決めたばかりだ。アジアや欧州などの埠頭を10カ所取得するという。

実際の成果は統計から見て取れる。2社が公表している合計18件の海外港湾での貨物取扱量をみると、18年は15件が前年から増え、そのうち10件は10%以上の増加をみせた。減った出資案件はわずか2件だけだった。

国有2社はいずれも中国を代表する企業だ。コスコはコンテナ海運大手の中遠海運控股など上場企業を傘下に持つ。16年に中国海運1位、2位の国有企業が合併して誕生し、コンテナ船の輸送量で世界3位になった。これまでに投資した埠頭は世界で約55カ所。18年12月期の売上高は前期比約20%増の2808億元(約4兆2000億円)だった。

招商局は1872年の清朝時代に誕生した歴史ある複合企業だ。招商局港口を中心に、世界約20カ国で56カ所の港湾事業に参画する。18年12月期の売上高は約11%増の6499億元(約9兆7500億円)だった。

両社は政府との関係も深い。コスコの許董事長は全国人民代表大会(全人代)の代表(議員)を務め、招商局の経営トップの李建紅董事長は政府の助言機関の全国政治協商会議(政協)の委員を務める。政府を後ろ盾とする資金力が強みで「今後も買収を加速させる」(許董事長)と話す。

各国でトラブルも

ただ、トラブルは抱えている。東アフリカのジブチ港では、招商局が13年に同港の23%の株式を取得した。だが同港にはもともとドバイが拠点の港湾運営大手DPワールドが04年に30年間の開発契約を結び、既に約3割出資していた。東アフリカと欧州、アジアをつなぐ要衝で、DPワールドは「招商局に割り込まれた」とし、経営混乱を理由に18年、招商局を提訴し現在も係争中だ。

順調にみえるギリシャのピレウス港でも2月、コスコが港付近に商業施設をつくる投資案を出したが、地元当局が否決した。既存の商業施設の集客減を懸念したためだ。当局は10月にもコスコの新たな埠頭の新設計画案を否決。「背景には影響力を強める中国への反発があった」(海運関係者)。ギリシャは財政の厳しさもあり、11月にコスコによる6億ユーロの追加投資は承認したが、今後、港拡張などの計画が順調に進むかは不透明だ。

米国政府も依然「中国が出資した港湾が軍事転用されかねない」と警戒を強めている。招商局が出資するスリランカのコロンボ港では14年、中国の軍用艦の存在を海外メディアが報じた。

国際貿易投資研究所(東京・中央)の小島末夫・客員研究員は「中国の出資比率が50%以下にとどまる案件もあり、経営を支配する港湾はまだ限定的だ」と指摘する。「(過剰債務の代償として中国が権益を得る)債務のワナへの警戒感が高まるなか、中国がさらに出資を広げられるかが今後注目だ」と話している。

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