「年齢にこだわらない教育が必要」小峰隆夫氏

逆境の資本主義
2019/12/31 2:00
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資本主義の長い歴史で人類は何度も技術革新を経験してきた。生活の豊かさと引き換えに消えていった仕事もある。デジタル化や人工知能(AI)の発展という波のなか、資本としての人の価値をどう高めていくべきか。大正大学の小峰隆夫教授は「年齢にこだわらない教育システムが必要」と話す。

小峰隆夫氏(こみね・たかお) 1969年東京大学経済学部卒、経済企画庁(現内閣府)入庁。物価局長や調査局長を歴任し、01年国土交通省国土計画局長。03年法政大教授、17年4月から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問。

「技術革新の陳腐化速い」

――デジタル化が進み、ハイスキル人材か否かで生じるような格差の是正を求める声も聞かれます。両者を共存させるにはどうしたらいいでしょうか。

「これまでの技術革新も様々な摩擦を生んだが、進歩そのものを否定するものではない。現状を改善しようとする行為が技術革新につながるとすれば、その結果はプラスに作用する」

「ただ最近の技術革新はテンポが速く、陳腐化の速度も高まっている。国の役割は技術進歩を受け入れて、それが本来の目的である人間の福祉につながるようにすることだ。日本の場合、働き方や人的資本形成のメカニズムを変えないとうまく対応できない」

――日本型の仕組みをどのように作り上げたらいいでしょうか。

「現状の大学教育や入社後にオンザジョブトレーニング(実地訓練)でノウハウを身につけるやり方は効率的ではある。だが技術革新のスピードが速くなっており、大学卒業後しばらくして学び直さなければいけない機会が次々に出てくる可能性がある。年齢にこだわらない教育システムが必要だ」

「同一労働同一賃金を突破口に」

――リカレント教育(社会人の学び直し)を充実させるには何が必要ですか。

「私も社会人に教えた経験があるが、中には企業に内緒で学びに来ている人もいる。企業の理解はまだ不十分だ。学び直しをするのは変わり者と受け取られる恐れがある。余力があるならもっと仕事をきちんとやれと言われかねない。大学院を出て修士号をとっても、企業は給料を上げるなどの評価をしない」

「最近は副業を認めるなどの動きもある。これは弾力性を高めるうえで非常にいい。企業も社員が副業で得たノウハウが本業で役立つ可能性が高いと考え始めている。このように、現実と制度が矛盾しているときは工夫して適応する動きが出てくる」

――日本型雇用システムの問題点はどこにあって、企業は何をすべきでしょうか。

「日本型の長期雇用の職能給は現代社会にフィットしていない度合いが強い。ひとつの突破口は同一労働同一賃金だろう。職務に応じた給料を支払う。ただ職務給にすると、同じ職務に就いている限り賃金は上がらない。これを受け入れるかどうか、議論し始めるときりがない。また職務給にするなら、ジョブディスクリプション(職務記述書)をしっかり作らないといけない。いまは上司などに言われたことをやる、といった融通むげなところがある」

■記者はこう見る「学び直しは全世代で」
 岡村麻由
 社会人3年目の記者は物心ついたころからインターネット環境があったいわゆる「デジタル・ネーティブ」世代だ。まるでハイテク人材世代のような呼称だが、スマートフォンやパソコンの使い方がこなれているだけではデジタルの急速な進化や人工知能(AI)の発展の波を乗り切れない。
 新技術が既存の枠組みを壊して生活に浸透すると、過去に学んだ知識の多くは陳腐化していく。小峰隆夫氏の言う「年齢にこだわらない教育システム」の重要度は増している。大量生産・大量消費の時代が終わり、豊かさを生む資本は生産設備から知識などに移ってきた。一人ひとりが自らの「価値」に向き合う必要がある。
 とはいえ、既存の雇用体系や多くの企業の職場の雰囲気が学び直しを前提としているとは言いがたい。デジタル化やAIの発展で人間が担う領域が減るといわれるなか、学び直す必要があるのは若手も中堅・ベテラン社員も一緒だ。全世代が知識を磨き続けられる土壌作りが求められている。

「逆境の資本主義」 1月1日連載スタート

日本経済新聞は1月1日、連載企画「逆境の資本主義」を始めます。資本主義の歴史を振り返りつつ、その未来を考えます。様々な課題に直面する資本主義の処方箋を探るべく、取材班は世界各地に足を運びました。専門家へのインタビューや豊富なデータ、現場の映像を交えて、資本主義の行方を探っていきます。

▼連載開始に先行してインタビュー記事を公開しています。

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