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北沢豪さん 障害者アート・スポーツが共生導く

「パラリンアートカップ」審査員が語る

日本障がい者サッカー連盟会長の北沢豪さん。パラリンアートカップの審査員も務める

元サッカー日本代表で、日本障がい者サッカー連盟(JIFF)会長の北沢豪さんはスポーツ以外でも障害者の社会参画を支援する活動に力を注いでいる。障害者アート作品のコンテスト「SOMPOパラリンアートカップ」の審査員もそのひとつ。2020年東京五輪・パラリンピックは日本に共生社会を根付かせると期待されている。障害を持つアスリートやアーティストの活躍を後押しする北沢さんに、共生社会はどう映っているのかを聞いた。

――障害者アーティストによるスポーツを題材にしたコンテストに審査員として関わるようになって4年になります。

「作品を展覧できる場所を増やして認知度を高め、作品を購入してもらえるようにしたり、(作品をデザインに採用した)かばんを商品化したりして、アーティストとしての仕事につながっていく流れができています。アーティストが自分の能力に気づく場を提案できたのは4年間続けてきた成果です」

――今年は700点以上の応募作がありました。最も印象に残ったのは、どの作品ですか。

「北沢豪賞の『東京2020始動』という作品に注目してください。19年の年末ですから、まさしく今、(20年に向けて)スタートする雰囲気が感じられ、タイミングとしてはバッチリです」

北沢豪賞に輝いた田尻はじめさんの作品「東京2020始動」

――サッカーではなく、陸上競技を描いた作品ですね。

「本当に良いと思える作品を選びました。実際の陸上競技ならば、スタートでは選手は下を向いているはずですが、この作品では、しっかりと前を向いています。筋肉の描き方、目つきの表現にも迫力があります。アスリートは心の中の思いがパフォーマンスにつながります。それが表現されているから、作者の田尻はじめさんの思いも作品に込められていると感じます」

――JIFFが発足し、会長に就任してからも4年目になりました。どんな変化を感じますか。

「大事なのは、アスリート以外の障害者にも社会に参加しようという気持ちを持ってもらえるようにすること。パラリンアートカップへの参加も一例です。ここ数年の変化として、障害者が街に出ている姿がたくさん見られるようになりました。それは障害者アスリートが活躍したからだと思っています。がんばっている姿が注目されれば、アスリート以外の障害者も街に出て行こうという気持ちになると思います」

「もっと障害者が街に出てくれば、スマートフォンを見ながら歩いて(障害者と)ぶつかることやホームで電車と接触する事故が起こらないように、マナー改善やインフラ整備が少しずつ進むでしょう。もっと障害者が社会に出て行きやすい環境をつくることになります。こうした共生社会につながる動きにスポーツを役立てたいと考えています」

――JIFFが支援する7競技のうちのひとつがブラインドサッカー。20年東京パラリンピックで日本代表の活躍は期待できますか。

「障害者がもっと社会に出て行きやすい環境をつくりたい」

「11月に福島でアルゼンチン戦を見たのですが、日本は相手が世界ランキング1位のアルゼンチンだろうが何だろうが関係ないとばかりに激しい試合をしました。結果は1-0で負けましたが、差はなくなってきていますね。ただ小さいころから健常者と交じり合いながらプレーしてきた選手は理屈では説明できないようなプレーができる強さがあります。アルゼンチンやブラジルでは腕がない子も目が不自由な子も一緒になって公園で遊んでいますからね。もともと交じってプレーする環境があるのです」

――障害者と健常者が一緒にサッカーをするスタイルは(知的障害者の国際スポーツ大会を運営する)スペシャルオリンピックスが推進する「ユニファイドスポーツ」も有名です。

「昨年、スペシャルオリンピックス国際本部が開いた『ユニファイドフットボールカップ・シカゴ』は非常におもしろかった。(健常者と同じチームでプレーしながら)知的障害を持つアスリートの競技力を高められますから。今まで出てこなかったパスが出てくるようになるし、もっとうまくなるために必要なプレーを意識するようにもなります。一緒にサッカーをする効果は大きいですね」

――JIFFが主催するイベント「インクルーシブフットボールフェスタ」では、障害の有無に関係なく、小学生がプレーする「まぜこぜサッカー」を実施しています。スポーツを通じてインクルージョン(包摂)の意識を醸成する効果に手応えはありますか。

「一緒になってサッカーを楽しむことで、子供たちはできること、できないことの違いに気づいていき、そのために必要なプレーをしていきます。子供は順応するのが早いですね。目が不自由な仲間がいれば、声をかけてコミュニケーションを取るし、脳性まひの子には丁寧にボールを出します。でも遠慮はいけないから、そのギリギリの線で互いにプレーをします」

JIFFが開いた「まぜこぜサッカー」は障害の有無に関係なくサッカーを楽しめる(12月22日、東京都多摩市)

「ただ、我々はまだ手探りの状態。海外の事例を参考にしています。今夏、バルサ財団(サッカー、スペイン1部リーグのバルセロナが設立)がインクルージョンを促進する手法を指導者に対してレクチャーしてくれました。子供たちに気づきがあって、それで終わりではない。子供たちに『何を感じられた?』とか、『どう考えた?』と問いかけ、その気づきを言葉にしていく方法でした。プレーの後にフィードバックさせ、頭の中に残していくことが大切なのです」

――東京パラリンピック後の障害者スポーツの課題は何でしょうか。

「自力でお金を稼ぐ施策がないと競技団体の運営は厳しくなります。今は寄付が集まっていますが、それが途絶えてしまえば、お金を(運営に)回せなくなります。だから自分たちで運営できる能力を備えないといけない。そのためには自分たちの強みを売り物にしていく必要があります。例えば、ブラインドサッカーはコミュニケーションのスキルを向上させる教育や企業研修ができます。他の競技団体もそれぞれ強みがあると思うので、収益を生み出す仕組みを作り出さないといけないですね」

▼日本障がい者サッカー連盟(JIFF)
障害者サッカーの7団体(日本アンプティサッカー協会、日本CPサッカー協会、日本ソーシャルフットボール協会、日本知的障がい者サッカー連盟、日本電動車椅子サッカー協会、日本ブラインドサッカー協会、日本ろう者サッカー協会)の連携強化を目指して発足。日本サッカー協会との連携窓口も担う。
北沢豪(きたざわ・つよし)
1968年東京都生まれ。元サッカー日本代表。本田技研、ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)で運動量の豊富なMFとして活躍。91年日本代表デビュー。ワールドカップ(W杯)フランス大会の予選突破にも貢献。現役引退後は日本サッカー協会理事などを務める。2016年4月に日本障がい者サッカー連盟(JIFF)が発足し、会長に就任。

(聞き手は山根昭)

◇   ◇   ◇

パラリンアートカップ2019、ラグビーの作品目立つ

「SOMPOパラリンアートカップ2019」の表彰式に出席した受賞者ら(12月4日、東京都中央区)

障害者の支援活動に取り組む一般社団法人、障がい者自立推進機構はスポーツをテーマにした障害者アート作品のコンテスト「SOMPOパラリンアートカップ2019」の受賞作を発表した。今年の応募作品は703点で、ラグビーのワールドカップ日本大会の人気を反映して、ラグビーを題材にした作品が目立った。グランプリ(最優秀賞)に選ばれたのは山口県の山内崇敬さんの作品「不屈」。「不屈」もラグビー選手の姿を力強く描き、高い評価を得た。

新潟県の田尻はじめさんの作品「東京2020始動」などが審査員による個人賞に輝いた。トップスポンサーの損害保険ジャパン日本興亜は都道府県ごとに選ばれた47作品に「損保ジャパン日本興亜賞」を贈った。損保ジャパンは2020年1月以降、47作品を対象に全国の支店で贈呈式を開く予定。SOMPOパラリンアートカップは日本経済新聞社などがメディアパートナーを務めている。

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