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東京五輪とW杯 「逆算」で二兎追う森保ジャパン
サッカージャーナリスト 大住良之

2019/12/26 3:00
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森保一監督率いる日本代表は2019年に23試合を戦った。

通常、国際サッカー連盟(FIFA)が定める「国際マッチデー」で可能な試合数は年間10。だが今年は1月にアジアカップ(アラブ首長国連邦=UAE、7試合)、6月に南米選手権(ブラジル、3試合)、そして12月に東アジアE-1選手権(3試合)と大会参加が重なり、合計すると23試合にもなった。結果は15勝3分け5敗、得点41、失点20。

現在の日本代表の最終ターゲットは22年にカタールで開催されるワールドカップである。第1段階としてその出場権を獲得し、最終的にはワールドカップでのベスト8以上をめざす。そこで、1061日後(19年12月26日から)のワールドカップ開幕時に日本サッカーの総力を結集した最強のチームができるよう、森保監督は逆算した強化スケジュールをたてている。「逆算」というところが、19年の重要なポイントだ。

日本はE-1選手権の最終戦で韓国に敗れ、優勝を逃した=共同

日本はE-1選手権の最終戦で韓国に敗れ、優勝を逃した=共同

12月18日まで行われた今年最後の大会、東アジアサッカー連盟(EAFF)のE-1選手権は、最終戦に韓国に0-1で敗れ、優勝を逃した。中国に2-1、香港に5-0と2連勝で迎え、得失点差で優位に立って引き分けなら優勝という立場だったが、相手の強い圧力をはね返すことができず、前半28分に韓国MF黄仁範(ファン・インボム)に許した1点を取り戻すことができずに敗れた。

ただ、このE-1は国際マッチデー外の大会のため、日本も韓国も欧州のクラブでプレーしている主力を招集することができなかった。しかも日本はJリーグがE-1開幕直前の7日まであり、J1参入プレーオフ、さらには大会終了直後の21日に行われる天皇杯準決勝やシーズン後の選手に与えなければならない休養期間なども考慮しなければならなかった。

日本代表83人招集、29人がU-22世代

森保監督の決断は、この大会と、28日に行われるU-22(22歳以下)日本代表の国際試合、長崎でのジャマイカ戦を、来年1月にタイで行われる「アジアU-23選手権」への最終選考に当てようということだった。

アジアU-23選手権は、来年の東京オリンピックのアジア予選を兼ねて行われる。ホスト国としてオリンピック出場が決まっている日本としては上位進出の必要性はないのだが、「オリンピックで金メダルを目指す」と公言する森保監督だけに、「アジアでの優勝は当然の義務」と考えているだろう。

本来ならジャマイカ戦は「壮行試合」のような意味合いだったが、森保監督はできるだけ多くの選手を見るためにE-1を利用し、チームを分けることにしたのだ。E-1参加の23人のうち、「U-22世代」は13人。28日のジャマイカ戦には、基本的にE-1と重複しないメンバーを選んだ。

U-22世代の冨安(右)はすでにA代表でもレギュラークラスとして活躍する=共同

U-22世代の冨安(右)はすでにA代表でもレギュラークラスとして活躍する=共同

U-22世代には、DF冨安健洋(ボローニャ)、MF堂安律(PSVアイントホーフェン)など、すでにA代表でもレギュラークラスとして活躍している選手がいる。次代の日本のエースといわれるMF久保建英(マジョルカ)、現在のキャプテンの中山雄太(ズヴォレ)をはじめ、冨安や堂安のほかにも欧州のクラブで活躍する選手は少なくない。

オリンピックのサッカーはクラブに選手供出を強制できる大会ではないので、彼ら抜きでも戦えるようにしておかなければならない。そこで6月の南米選手権と12月のE-1で多くのU-22世代を日本代表に招集したのだ。今年、森保監督が日本代表に招集したのは83人。うち29人がU-22世代だった。

だがそれは「オリンピックからの逆算」という意味ではない。オリンピックはあくまでも「過程」であり、若い選手に高いレベルの経験をさせ、成長をうながすことによって日本代表に常に新しい血を注ぎ込み、競争を持続させようとしているのだ。

五輪をスプリングボードにして成長

昨年、ワールドカップでの西野朗監督の成功の後を受けて新チームをスタートさせた森保監督は、2列目に堂安、南野拓実(ザルツブルク→リバプール)、中島翔哉(ポルト)を並べた攻撃陣でまたたく間にファンの心をつかんだ。昨年の5試合はほぼ固定したメンバーで戦い、チームのベースをつくった。

そうした昨年の華々しさと比較すると、19年の日本代表はもたついた感があった。ワールドカップのアジア第2次予選は確実に全勝したが、アジアカップでは決勝でカタールに1-3で敗れただけでなく苦しんだ試合が多く、11月には親善試合でベネズエラに1-4の完敗を喫した。そしてE-1でも優勝を逃した。だがそれはすべて、ワールドカップから逆算し、オリンピックをスプリングボードにして22年にも成長を続け、大きく飛躍できるチームをつくろうという計画から出たものなのだ。

森保監督(右)は22年から逆算して日本代表を世界に向けて大きく飛躍させようとしている=共同

森保監督(右)は22年から逆算して日本代表を世界に向けて大きく飛躍させようとしている=共同

E-1で目立ったのはMF森島司(22、広島)、MF田中碧(21、川崎)、FW小川航基(22、水戸)といった、攻撃力のある選手たち。来年のオリンピックだけでなく、その2年後のワールドカップで彼らが輝く姿、可能性を、森保監督は見ている。

「二兎(にと)を追う者は一兎をも得ず」ということわざがある。しかし森保監督は、22年から逆算して、20年のオリンピックという「2匹目の兎(うさぎ)」をあえて追い、日本代表を世界に向けて大きく飛躍させようとしている。

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