郵政、多重統治で混乱 トップ民間出身でも実務は官僚OB
総務相「取締役に旧郵政省OBはマイナス」

2019/12/22 0:00
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日本郵政グループの混乱が続いている。前総務次官が行政処分の情報を郵政側に漏らしたことは、官民のもたれ合いに甘える郵政の姿を浮き彫りにした。高市早苗総務相は旧郵政省のOBが経営陣に入ることが「マイナス」と表明。不祥事を受けて天下り官僚の影響力は下がりそうだが、監督官庁や政治も絡む多重統治を解きほぐすのは容易ではない。

「郵政グループの取締役クラスに旧郵政省採用のOBが入ることはマイナスが大きい」。高市氏は前総務次官の情報漏洩を受けた20日の記者会見でこう語った。問題の根底には、民営化された郵政で官僚OBの影響力が強く残っていることがある。

親会社の日本郵政は旧日本興業銀行(現みずほ銀行)出身の長門正貢氏が社長を務める。上級副社長の鈴木康雄氏を除く14人の取締役のうち13人が企業経営者ら民間出身者だ。グループの日本郵便、ゆうちょ銀行かんぽ生命保険も民間の金融界から社長を招いている。

だが、4社ともに取締役副社長は官僚出身だ。中でも日本郵政上級副社長の鈴木氏は旧郵政省を引き継ぐ総務省で事務方トップの次官を務め、後に郵政へ転じた。旧郵政省と旧自治省、旧総務庁が統合して2001年に発足した総務省では予算規模などの面から旧自治省の力が強く、これまで17人の次官のうち旧郵政省出身は5人だけ。郵政のドンと呼ばれる鈴木氏はその2人目だった。

鈴木氏は後輩の面倒見もよく、グループ内で求心力があるとされる。今回、辞職した前次官の鈴木茂樹氏も鈴木副社長とは旧知の間柄だ。関係者の間では、総務省から鈴木副社長への報告は慣例になっていたとの見方もある。

各社の執行役の多くは旧郵政省に入省し、郵政事業庁や日本郵政公社を経て郵政グループに身を置く生え抜き組が構成している。外様の社長よりも、グループ内の幹部人事を取り仕切る鈴木氏らのほうを向きがちだ。トップは民間出身でも、事実上は元官僚が影響力を持つ組織になっている。

「情報が上がってこない」。日本郵政の長門社長は18日の記者会見でかんぽの不適切販売が取締役会に報告されなかったとくり返した。問題の原因究明にあたる外部弁護士の特別調査委員会は18日の報告書で、かんぽ生命のガバナンス(企業統治)について「担当部署で情報を閉じて議論し、結論だけ取締役会に上げる風土がある」とした。

統治不全に輪をかけるのは監督官庁が分かれていることだ。総務省が日本郵政と日本郵便、金融庁がかんぽとゆうちょ銀行をそれぞれ所管する。

金融庁は不正が疑われる事案があれば、必要に応じて検査に入り是正を求める。ただ金融機関に対して行政処分の発動など強力な権限を持つ金融庁にとっても「郵政は組織体制が複雑で扱いにくい存在だ」と幹部は口をそろえる。普通の金融機関は金融庁に追及されないようガバナンスを働かせるが、部分的に総務省の監督下にある郵政グループはそこが弱い。

全国郵便局長会(全特)は自民党の有力支持団体だ。最近もゆうちょの限度額引き上げや郵便局網維持のための交付金制度の創設など全特の意向に沿って自民党主導で実現した政策があった。ゆうちょとかんぽの郵政グループからの切り離しを義務づけた当初の民営化の方針はうやむやになっている。政治に翻弄される以上、本当の意味での民営化は難しい。

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