「トヨタ、入っている」へ 中国でFCV中核部品外販

2019/12/22 18:00
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トヨタの基幹部品で組み立てられたFCVのバス(江蘇省蘇州市の地元テレビのニュース番組から)

トヨタの基幹部品で組み立てられたFCVのバス(江蘇省蘇州市の地元テレビのニュース番組から)

トヨタ自動車が中国で燃料電池車(FCV)の基幹部品の提供を始めた。完成車にこだわるトヨタの本社が中核部品を外販するのは珍しいが、その念頭にあるとみられるのは米インテルのビジネスモデルだ。インテルは台湾企業に自社製半導体を搭載したパソコンの作り方を教えることで業界の覇権を握った。その先例にならい、トヨタは中国でのFCV普及と「トヨタ・インサイド」の実現をめざして走り始めた。

「トヨタの技術を使って、中国のFCVをけん引する拠点をつくり出す」。そんな産業政策を打ち出した中国沿海部の江蘇省常熟市で、2020年1月からFCVのバス20台が運行を始める。同市の政府庁舎前などを通る主要路線で、中国のFCVのショーケースとする構想だ。

地元政府はトヨタの技術をアピールするものの、トヨタやそのグループ会社がバスを製造するわけではない。FCVの基幹部品で水素と酸素の化学反応で動力源となる電気を起こす「燃料電池(FC)スタック」などを提供する黒子としての役割に徹する。

具体的にはトヨタのお膝元、愛知県豊田市トヨタ町1番地にある本社工場で製造したFCスタックを、中国のFCV向けシステムインテグレーター(SI)企業に供給。SI企業はトヨタの支援を受けて関連部品と組み合わせたシステムを構築し、トヨタと提携した商用車メーカーがシステムを組み込んでバスを製造する流れだ。

まさにインテルが1990年代にパソコンのマザーボードの規格を標準化して台湾企業に供与し、パソコン普及と自社製CPU(中央演算処理装置)の搭載を実現したのと似たビジネスモデル。その後、スマートフォンでも同様のビジネスモデルが広がった。

トヨタは14年に世界初の量産FCVを発売したが、日本では当初想定より伸び悩む。一方、中国政府はFCVを電気自動車(EV)に次ぐ新エネルギー車の柱に位置づけてバスでの普及を狙っており、両者の思惑が一致した格好だ。

100年に1度の大転換時代を迎えた自動車業界。新エネ車で世界市場の過半を占める中国では新興メーカーが製造を外部に委託する手法が定着。パソコンやスマホのようにブランドと実際に製造する企業が分離する動きが加速すると同時に、ライドシェアの普及で車の「所有」から「利用」への転換も進む。

そんな変化が速い中国市場で、トヨタは完成車を第一に考える従来のビジネスモデルから一歩を踏み出したと言える。中国で新たな挑戦に取り組む動きは自動車業界にとどまらない。中国での高成長をめざすパナソニックの本間哲朗専務執行役員は「日本での既存事業にこだわらず、まず中国で製品やサービスの革新を起こし、世界に展開する」と力を込める。

米中貿易交渉は「第1段階の合意」に達したが、ハイテク覇権を巡る米中の争いは続く見通し。米中双方で事業を展開する日本企業は難しいかじ取りを求められるが、コア技術やコンプライアンスを守ったうえで中国という壮大な実験場を利用しない手はない。

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