景気・防災 膨らむ財政 20年度予算案 歳出102兆円超
政府が20日に閣議決定した2020年度当初予算案の総額は102兆6580億円と過去最大を更新した。19年度に続く100兆円の突破。膨張する社会保障費に加え、景気下支えや災害に備えるためのお金を積んだが、財政規律への意識は乏しい。アベノミクスによる税収増の勢いに陰りも出始めるなか、歳出を持続的な成長につなげることが課題になる。
麻生太郎財務相は20日、予算案の閣議決定を受け「経済再生と財政健全化の両立をめざす予算だ」と胸を張った。
歳出は19年度より1兆2千億円増えた。消費税率を10%に上げた財源を教育無償化などに充てるため、社会保障費は5.1%増える。来年度は高齢化による医療・介護費などの自然増が一時的な人口要因で鈍るにもかかわらず、第2次安倍政権以降で最大の伸び率になっている。

人口が多い「団塊の世代」が75歳になり始める22年度以降に想定される社会保障費の急膨張を控え、不安が残る状況だ。
公共事業関係費は0.8%減の6兆8571億円。5日に閣議決定した経済対策を裏付ける19年度補正予算案に1.6兆円を計上したが、20年度予算案でも、前の年より16%増えた19年度と同規模の水準を維持した。
20年度は相次ぐ自然災害を受けた3年間の緊急対策の最終年度となる。政府・与党には計画延長を求める声も多く、21年度に事業費を縮小できるかどうかは不透明だ。
防災・減災の新たな対策は不可欠だが、ムダのない「賢い支出」が求められており、効果の検証が課題になる。
景気下支え策に使う臨時対策費は19年度当初予算の約2兆円よりは少ない。ただ19年度補正予算案にも関連費用を積んでおり引き続き高水準だ。
中小店舗を対象にしたキャッシュレス決済時のポイント還元策には19年度当初予算に2800億円、補正予算案で1500億円を追加計上したが、20年度予算案はさらに2700億円を充てる。

この結果、還元制度が終わる20年6月末までに投じる総額は、18年末時点の見込みよりも約3千億円多い7千億円規模になる。この事業に予算の上限は設けておらず、利用者がさらに増えれば追加支出を迫られる。
マイナンバーカードの保有者にポイントを付与する新制度にも2500億円を投じる。2万円を払えば5千円分のポイントを受け取れる。東京五輪後の消費の落ち込みを防ぐ狙いだが、カードの保有者が14%しかないので、政策の効果を疑う声もある。
税収は過去最高の63兆5130億円を見込み、国債の新規発行額は12年末に第2次安倍政権が発足してから8年連続で減る。財政健全化への姿勢を示す思惑がにじむが、1.4%という高めの実質成長率見通しを前提にした強気の税収見込みだけに危うさがある。
19年度も当初予算で税収を62兆4950億円と見積もったが、米中貿易摩擦などで60兆1800億円に下方修正した。20年度も景気の行方次第で、国債を追加発行しなければならなくなる恐れが残る。