北海道開発予算5748億円、10年度以降で最大に

政府が20日閣議決定した2020年度予算案で、北海道開発予算は19年度当初予算比2%増の5748億円だった。増加は8年連続で、予算規模は10年度以降で最大。自然災害に備えるインフラ強化の費目を軒並み積み増し、農業や水産業にも重点配分。民族共生象徴空間(ウポポイ)開業に合わせ、アイヌ文化振興の予算も急増させる。
公共事業費にあたる北海道開発事業費は5631億円(2%増)で、こちらも10年度以降で最も多い。通常の歳出と別枠で、防災などに充てる臨時・特別の措置として644億円を計上。臨時・特別の措置を含む開発予算は6393億円(1%増)になった。
北海道の鈴木直道知事は20日、「必要な予算が確保された」とコメントした。20年度予算で最優先課題とされるのは18年9月の北海道胆振東部地震からの復興のための土木インフラの強化や、近年相次ぐ大規模な自然災害への備えだ。
項目別では「治山治水」に1023億円(3%増)を計上。うち治水に944億円(2%増)を充てる。全国的に河川の氾濫や洪水が頻発しており、16年の台風で氾濫した十勝川や、石狩川などで治水対策を進める。石狩川下流域の北村遊水地の整備や平取ダムの建設を進め、洪水を未然に防ぐインフラを築く。
胆振東部地震からの復興では、土砂災害で大きな被害を受けた厚真町で再発防止のため砂防設備の整備を急ぐ。北海道では高度成長期以降に建設されたインフラ設備の老朽化も目立っている。道路や港湾設備、空港など各種施設の点検や老朽化対策にも重点を置く。

観光関連では空港が一般会計ベースでは113億円と39%減ったが、特別会計には199億円と今年度並みの水準を確保している。新千歳空港の滑走路とターミナルなどをつなぐ誘導路を複線化。冬季に除雪車が滑走路を閉鎖したり、航空機が滑走路に残ったりするのを防ぐ。航空機の安定した運航で旅行者の受け入れ環境整備につなげる。
世界的なブームとなっている大型クルーズ船が寄港しやすいよう、函館港や小樽港の整備も進める。農水産物輸出のための設備導入や物流ターミナルの整備、地震対策などと合わせて、港湾には173億円(1%増)を計上した。外国人のドライブ観光を促進する多言語での道路情報提供や道路景観の保全や、サイクルツーリズム推進のため自転車が走りやすい道路環境の整備や情報発信も盛り込んだ。
農業では農業農村整備に今年度とほぼ同額の779億円が盛り込まれた。農地の大区画化を進めて生産性向上を図り、自動運転などの先端技術を活用するスマート農業の導入を促進。水利施設の耐震化や排水機能の強化で防災力も高める。
水産基盤整備にもほぼ同額の236億円を充て、競争力を引き上げる。漁港の岸壁への屋根取り付けや魚を洗浄する施設の整備などの衛生管理対策を進め水産物の付加価値を高める。魚礁の設置や藻場の造成で水産資源の回復にも取り組む。
アイヌ文化の振興のためのアイヌ伝統等普及啓発等経費は16億円と1.7倍に拡大する。アイヌ文化を学習できるウポポイが20年4月に白老町で開業するのに合わせ、来年度は施設の維持や管理、運営費を計上。国は年間来場者数で100万人を目標としている。
(荒川信一)
農業・観光予算にも重点、スマート農業に15億円
20年度の開発予算以外では、農林水産省予算に注目だ。スマート農業の推進のため15億円(今年度当初は5億5百万円)を計上。自動走行トラクターや野菜の自動収穫期などロボットや人工知能(AI)を使った技術の導入を進めるもので、各地で実証実験に取り組んでいる北海道の農業のIT化に追い風となりそうだ。
鳥獣被害防止とジビエ活用には101億円(同103億円)を充てる。侵入防止策の設置や野生動物の捕獲者、処理加工技術者の育成を進める。シカの捕獲技術開発なども盛り込まれ、エゾシカによる農林業被害が40億円弱に達する北海道も期待をかけている。
観光庁予算には、国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業(新規)には20億円が盛り込まれた。地域が策定した計画に基づき、スキー以外のコンテンツ作成や外国語対応のインストラクター確保などの取り組みを支援する。
2次交通の確保に向けた実証実験なども補助の対象。アクセスの確保が長く課題となっている北海道各地のスキー場にもチャンスがありそうだ。