DV別居の妻に遺族年金 東京地裁、国に支給命令
夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れて約13年間別居していた熊本県の女性(73)が、夫の死後に「生計を共にしていたと言えない」との理由で遺族厚生年金の支給を認めなかった国の処分を取り消すよう求めた訴訟の判決で、東京地裁は20日までに「別居はやむを得ない事情だ」と判断し、国に支給を命じた。
訴訟に発展したケースでは、これまで判断が分かれているが、厚生労働省は10月、DVで別居した配偶者や子どもにも支給を認めるよう促す指示を日本年金機構に出している。
判決で清水知恵子裁判長は、女性が夫の収入から得た財産を持ち出して生活費に充て、夫も黙認していたことなどから「別居中も婚姻関係に基づき、夫の収入で生計を維持していた」と指摘。国の処分は違法だと結論付けた。国の認定基準について「夫婦の在り方はさまざまで、限定するのは相当でない」とも述べた。
判決によると、女性は1969年に結婚し主婦として生活していたが、夫の暴力に耐えかねて2003年に別居。夫は16年に死亡した。
代理人を務める藤岡毅弁護士は「同じようにDVで避難生活を強いられ年金をもらえない人が救済されるよう、この判決を役立ててほしい」と話した。
厚労省は「内容を精査し、対応を検討したい」としている。
〔共同〕