「生涯現役」政策で後押し 全世代型社会保障
年金75歳開始で8割増 70歳まで雇用機会を提供

2019/12/19 23:00
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長く働いて、公的年金の受け取りはできるだけ遅らせ、1カ月あたりの年金額が増えるよう政策で後押しする

長く働いて、公的年金の受け取りはできるだけ遅らせ、1カ月あたりの年金額が増えるよう政策で後押しする

政府は19日にまとめた社会保障改革案で「生涯現役で活躍できる社会」を掲げた。長く働いて、公的年金の受け取りはできるだけ遅らせ、1カ月あたりの年金額が増えるよう政策で後押しする。希望する高齢者には70歳まで就業機会を与えるよう企業に努力義務を課す。組織の新陳代謝を阻害しないためには、雇用の流動化を進める必要もある。

政府は全世代型社会保障検討会議の中間報告で「年齢を基準に『高齢者』とひとくくりにすることは現実に合わなくなっている」と指摘した。65歳を基準に高齢者として一律に支えられる側に回る今の仕組みを変えていく考えだ。

中間報告で示した高齢期の働き方と老後をモデル化してみる。

60歳で定年を迎えた後は70歳まで嘱託などの契約社員として働く。退職した後の5年間は個人型の確定拠出年金(イデコ)といった私的年金を取り崩して、生活費を補填する。75歳から公的年金の受け取りを始めれば、1カ月の年金額は基準額から84%多くなり、安心した老後を送ることができるというイメージだ。

その柱になるのは70歳までの就業機会の提供だ。現在、高年齢者雇用安定法で、企業はすべての希望者を65歳まで雇用することが義務付けられている。企業は(1)定年廃止(2)定年延長(3)嘱託などで再雇用――の3つから選ばなければならない。

それよりさらに5年長い70歳までの就業機会をいかに与えるかについては、従来の3つの選択肢に(4)他企業への再就職支援(5)起業やフリーランスになり、業務委託契約を結ぶ(6)勤め先が出資するNPOなどに参加――の3択を加える。

政府の調べでは就労する60歳以上の8割は70歳以降も働くことを希望している。ただ、高齢になるほど健康問題などで働く意欲は個人差が大きくなる。企業の負担が重くなりすぎないように、就業の選択肢を広げた。

課題は残る。一定の年齢になると退職する日本企業の「年齢基準」は企業内で強制的に世代交代を起こし、新陳代謝を促してきた面がある。年功序列で相対的に給料の高い世代がいなくなれば、その分を若い世代の賃上げ原資に使うこともできる。同じ会社で長く働く人が増えれば、こうした組織活性化の機能は損なわれる懸念がある。

政府の中間報告では、中途採用の促進を盛り込んだ。政府は具体策として従業員301人以上の企業に対して、中途採用や経験者採用の比率を公表するよう義務付けると明記した。公的な圧力によって中途採用を活性化させる狙いだ。

ただ、情報開示だけで転職が活発になるかは見通せない。そもそも組織の活性化や技術革新をけん引できる高齢者がどれだけいるのかという問題もある。解雇規制を緩め、雇用の流動化を進める政策なども必要になる。

中間報告は70歳までの就業機会の提供に併せ、公的年金制度の見直しも盛り込んだ。現在60~70歳の間で選べる受給開始年齢の上限を75歳まで引き上げる。受給を1カ月遅らせるごとに、1カ月あたりの年金額は0.7%増える仕組みで、75歳まで延ばせば84%増える。確定拠出年金は加入できる年齢を60歳から引き上げ、将来の年金額を増やせる仕組みも整える。

長く働くのには健康の維持も欠かせない。生活習慣病の重症化予防、がん検診の受診率向上に取り組む自治体には交付金を手厚くする。

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