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パラリンピアン539種目に挑む 可能性は無限

2020/1/6 2:00
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訂正>1月6日の公開時、見出しと記事でパラリンピックの種目を「540種目」としていましたが「539種目」の誤りでした。(2020/1/16 16:26)

8月25日に開会式を迎える東京パラリンピックでは、五輪を上回る539種目で金メダルが争われる。障害のハンディをものともせず、可能性への挑戦が見る者の心を打つ。世界に挑む5人のパラリンピアンを紹介する。

陸上:佐藤友祈 世界記録総なめ

「東京パラリンピックでは、400メートルと1500メートルの2種目とも世界記録を更新して金メダルを取りたい」。日本車いす陸上界のエース、佐藤友祈(30、WORLD-AC)の言葉には迷いがなく、そして力強い。

「まずは2月にかけて国内でしっかりと走り込みたい」

「まずは2月にかけて国内でしっかりと走り込みたい」

初出場だった2016年リオデジャネイロ大会ではレイモンド・マーティン(米国)の後じんを拝し、首に掛けられたのは銀メダル2つ。競技開始からわずか4年で世界2位という快挙だったが、悔しさがこみ上げた。

マーティンに追いつこうと自らを追い込んできた佐藤は着実にスケールアップした。今や400メートル、800メートル、1500メートル、5000メートルで世界記録保持者だ。昨年11月の世界パラ陸上では、マーティンらを抑えて400メートルを制した。最後の直線で逆転するレース展開に「スタートが改善したから最終的に抜けた」と手応え十分だ。

「まずは2月にかけて国内でしっかりと走り込みたい」。昨春に新調したレーサー(競技用車いす)と体を一体化させるべく、距離を積むことが当面の課題だ。4年越しの願いを成就させるべく、焦ることなく着実に歩を進めている。

(男子400メートル車いすT52決勝=8月28日、同1500メートル決勝=8月30日)

  

競泳:鈴木孝幸 泳ぎパワフル、5度目の正直へ

パラ競泳の鈴木孝幸(32、ゴールドウイン)は生まれつき右足が太ももの付け根からなく、左足は太ももが半分程度。右手は肘先がなく、左手の指も3本だけだ。それでも、117センチの体全体を使った泳ぎは実にパワフル。パラリンピックは2004年アテネから4大会連続で出場し、北京の50メートル平泳ぎで金、ロンドンの150メートル個人メドレーで銅など計5つのメダルを獲得したが、リオデジャネイロではメダルを逃した。

「銀を金に変えるために頑張りたい」(千葉県国際総合水泳場)=共同

「銀を金に変えるために頑張りたい」(千葉県国際総合水泳場)=共同

リオ以降、水中で下半身が沈むのを抑えるため、ウエートトレーニングに注力し、体幹を鍛え直した。その効果も表れ、昨年9月の世界選手権では銀メダル4つに銅メダル1つを獲得した。それでも「銀を金に変えるために頑張りたい」と満足はしていない。

経験豊富なベテランは、出場すれば5度目の大舞台に「自国開催で特別なパラリンピックになる」と東京への思いを強くする。昨年の世界選手権では3つの自己ベストを更新した。今なお成長を続ける32歳のベテランは頂点を見据え、リオの悔しさを東京にぶつける。

(男子50メートル平泳ぎ・運動機能障害SB3決勝=8月26日、同100メートル自由形・運動機能障害S4決勝=8月27日)

  

車いすラグビー:橋本勝也 競技歴3年、将来のエース

ベテラン勢の多い車いすラグビー日本代表に現れた新星が、福島県立田村高2年の橋本勝也(17)だ。中2の冬に競技を始め、2年後には強化指定選手に選出。2018年の世界選手権優勝メンバーにもなった。

「東京以降も絶対に代表のエースとしてやりたい」(東京都品川区)=共同

「東京以降も絶対に代表のエースとしてやりたい」(東京都品川区)=共同

一足飛びの出世は、日本代表のオアー監督が将来のエースと見込んだ資質があるがゆえ。先天性の四肢欠損で左右の手の指は2本ずつだが、長い腕を使ってこぐ車いすのスピードに秀で、相手の追撃をかわす。代表の得点源、池崎大輔(三菱商事)も「間違いなく日本を引っ張る選手になる」と太鼓判を押す。

昨年10月に日本で行われた国際大会ワールドチャレンジ。1次リーグ初戦のブラジル戦でチームトップの18得点。客席から「橋本コール」もおき、「声援が力になった」と笑顔を見せた。だが強豪・豪州との準決勝はベンチを温めたまま敗戦を見届け、「悔しい。負けたし、試合に出られなかった」と大泣きした。

ただ大いに刺激は受けたようだ。「世界一のプレーヤーを目指す。東京以降も絶対に代表のエースとしてやりたい」。この夏の決勝のコートには、必ず立ってみせる。

(決勝=8月30日)

  

ゴールボール:萩原紀佳 うなる右腕、2大会ぶり頂点へ

王座奪回に向けた期待の新戦力である。視覚障害者のゴールボール女子の萩原紀佳(塙保己一学園)。競技歴は浅いが、攻撃力を買われてチームの一翼を担っている。

「国際大会でも落ち着いてできるようになってきた」

「国際大会でも落ち着いてできるようになってきた」

シュートで陣形を乱され、連係した攻撃ができない苦境だった。萩原は「投げるね」と味方に告げると、右腕をしならせる。ボールは相手の体の横を抜けてゴールへ。2019年12月のアジアパシフィック選手権。萩原は1次リーグのオーストラリア戦で貴重な同点弾を決めた。

18歳の俊英の強みは攻撃力。この時のような速球だけでなく、床にバウンドさせる球も得意だ。「今年はけっこう投げ込みをしてきた」。ボールの中の鈴をできるだけ鳴らさないフォームでも長足の進歩を見せる。

小児がんの網膜芽細胞腫で目に障害を負った。競技と出合ったのは3年前。今ではポイントゲッターのライトで重要な戦力だ。「国際大会でも落ち着いてできるようになってきた」と自信も深める。12年のロンドンパラリンピックで団体競技初の金メダルに輝いた有望種目。2大会ぶりの「金」に輝くには伸び盛りの若手の力が欠かせない。

(決勝=9月4日)

  

カヌー:瀬立モニカ 精密パドル、地元の応援を背に

2016年リオデジャネイロ・パラリンピックで新種目として採用されたパラカヌー。当時18歳、ただ1人の日本代表として女子スプリント・カヤックシングル200メートル(運動機能障害KL1)に出場した瀬立モニカ(22、筑波大)の東京大会への思いはひとしおだ。生まれ育った東京・江東区で競技が実施されるためで、「素晴らしい応援をしてくれるみなさんと最高の時間を共有したい」と声を弾ませる。

「素晴らしい応援をしてくれるみなさんと最高の時間を共有したい」(海の森水上競技場)=共同

「素晴らしい応援をしてくれるみなさんと最高の時間を共有したい」(海の森水上競技場)=共同

昨年8月にハンガリーであった世界選手権では58秒93で5位に入り、東京パラ出場権を獲得した。8位だったリオでは9秒近くあった3位との差が、今回はわずか0.9秒。射程圏に入ってきたメダルに向け、「1日1日を無駄にせず、貪欲にがんばりたい」。パラ終了まで大学も休学し、トレーニングにいそしむ。

課題はラストの50メートル。「海外の選手に比べて速度の落ち方が激しいので筋持久力を養いたい」。ピッチをあげ、正確なパドルさばきを最後まで貫ければ。「自分にとっての強い武器」と呼ぶ地元の大声援を浴びながら、表彰台に立ちたい。

(女子スプリント・カヤックシングル決勝=運動機能障害KL1=9月5日)

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