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ジュネーブ優勝の作曲・高木日向子、現代音楽を身近に

文化の風

たかぎ・ひなこ 1989年、兵庫県尼崎市出身。2013年、大阪音楽大院音楽研究科修了。17年に日本音楽コンクール作曲部門第3位。18年から大阪音大助手を務める。好きな作曲家はフランス現代音楽の巨匠、オリヴィエ・メシアン。30歳

大阪音楽大助手の高木日向子が11月、若手音楽家の登竜門であるジュネーブ国際音楽コンクールの作曲部門で優勝した。手掛ける作品は、難解なイメージがつきまとう現代音楽。その世界を身近に感じてもらおうと、地道な創作と発表に力を入れている。

今回のコンクールの課題は、オーボエを中心としたアンサンブル曲。高木は奇をてらわず、現代音楽で多用される重音などの特殊奏法は用いなかった。「オーボエは音を長く伸ばすロングトーンが一番美しい」。その言葉通り、約17分の曲は、ゆったりとしたオーボエソロの音色を基本としながら、空気を乱すようなざわめきが時折起こる。

曲名は「L'instant(ランスタン)」。フランス語で「瞬間」を意味する。インスピレーションを受けたのが、画家・高島野十郎の「蝋燭(ろうそく)」という作品だ。「炎を描いた絵だが、単なる火ではなく精神的・霊的なものを感じた。そうした超感覚的なものを音楽で表現したかった」と意図を語る。

「優勝しようなんて考えず、作曲のモチベーションとして受けた」と、コンクールには自然体で臨んだ。大阪音大院在学中から、国内の主要コンクールである日本音楽コンクールに挑戦したが「結果を出そうと意識しすぎて」落選続き。一時は音楽をやめてしまおうと考えていたほどだ。

2017年に「好きなことをやって気持ちよく落ちよう」と日本音コンに臨んだことが転機となった。ピアノ弦の上に金属やゴムを置き音色を変える「プリペアド・ピアノ」の作品で第3位に入賞。作曲を続ける自信となった。留学経験もないが「留学すると他人の音楽に染まろうとしたかもしれない。一番落ち着ける環境で考えを深める方が合っていたのでは」と話す。

中学生のとき、初めて一人で作曲した。学級歌を作り、文化祭で披露した。「自分の作ったメロディーを何十人もの人が一度に歌うという経験がすごく心に残った」ことが作曲を志すきっかけとなった。

現代音楽に出合ったのは高校生のころ。ピアノコンクールの課題曲にジャズのリズムを使った作品があった。「それまで現代曲を聴いても意味がわからなかったが、なんて楽しい曲なんだと感じた」と振り返る。

「僕のご主人はスマホ中毒」の初演を見守る高木(右)(1日、大阪府池田市)

現在、こうした新しい音楽と聴き手が出合う場づくりに力を入れている。今年から音楽仲間とともに新曲を披露する小さなコンサートを開催。今月1日には、大阪府池田市内のスタジオで、自ら作詞もした歌曲を初演した。曲名は「僕のご主人はスマホ中毒」。会場は子供から大人まで10人ほどでいっぱいになった。

「朝から晩までスマホ、スマホ……」。飼い猫目線で、スマホに夢中になる人間をコミカルに描写。曲調は現代音楽より親しみやすくしたが、「ここ10年ほどで生まれた新しい言葉を使い、新しい感覚に即した曲を作りたい」と考えた。現代音楽は難解なイメージを持たれがちだが、「今まで現代音楽を聴いたことがない人の入り口のような存在になりたい」と意気込む。

このほかにも作品披露の場は続く。20年4月には日本センチュリー交響楽団首席客演ホルン奏者の日高剛がリサイタルで高木の曲を初演する。「雲」をテーマに曲の構想を練っている。20年度の大阪音大の定期演奏会では、ジュネーブの優勝曲を再演する予定だ。「機会があればオーケストラ曲などにも挑戦したい」と意欲を語る。

(西原幹喜)

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