史上3人目の弾劾裁判へ 米国の分断あらわに
トランプ氏罷免の壁高く

2019/12/19 12:47
保存
共有
印刷
その他

ミシガン州で演説するトランプ米大統領(18日)=ロイター

ミシガン州で演説するトランプ米大統領(18日)=ロイター

【ワシントン=永沢毅】米下院が「ウクライナ疑惑」でトランプ大統領の弾劾訴追を決め、与野党攻防の舞台は米大統領で史上3人目となる上院の弾劾裁判に移る。野党・民主党がめざすトランプ氏の罷免は共和党の大量造反が必要で、実現のハードルは高い。2020年大統領選をにらんで一段と先鋭化するトランプ政権と民主の対立は、米国の分断を映し出す。

下院本会議は18日、トランプ氏がウクライナ外交を悪用して20年大統領選を有利に進めようとした「権力乱用」と、議会の調査協力要請を拒否した「議会妨害」の2条項を採決した。与党・共和党の造反はどちらもなく、民主の造反はそれぞれ2人、3人だった。トランプ氏は中西部ミシガン州での演説で「共和はかつてなく結束している」と自信を示した。米ABCなどの世論調査で弾劾への賛成は民主支持層で85%だが、共和は12%にとどまる。

1974年のニクソン元大統領の弾劾決議案では、下院司法委員会で複数の共和議員が賛成に回った。民主党本部を盗聴したウォーターゲート事件の捜査妨害をニクソン氏が指示した録音記録が公表され、世論が弾劾賛成に傾いたためだ。身内の造反で弾劾が決定的になり、ニクソン氏は下院本会議の採決を前に辞任せざるを得なかった。

民主のペロシ下院議長は弾劾訴追後の記者会見で「民主の下院議員の勇気をこれほど誇りに思ったことはない」と訴えた。クリントン元大統領の弾劾を進めた当時の野党・共和党は政争優先との批判を浴びており、ペロシ氏は当初、弾劾に慎重だった。方針転換したのは、大統領選を前に「政権への対決姿勢を強める左派の弾劾論に抗しきれなくなった」(民主関係筋)のが実情だ。

ペロシ氏は弾劾で左派の主張を受け入れると同時に、左派に反対論がくすぶっていた北米自由貿易協定(NAFTA)を代替する新協定の修正で政権側と合意した。「新NAFTAを求める穏健派と、弾劾を要求する左派のバランスをとる党運営を余儀なくされた」(戦略国際問題研究所のウィリアム・ラインヒ氏)

1月上旬にも始まる上院での弾劾裁判は下院が提出した証拠をもとにトランプ氏が有罪かどうかを判断する。定数100の上院の議席は共和53、民主47。大統領を有罪として罷免するには出席議員の3分の2以上の賛成が必要で、共和議員の4割にあたる20人の大量造反が必要だ。共和はトランプ氏支持でおおむね結束しており、現時点で罷免の可能性は低い。

弾劾裁判に向け与野党の駆け引きも始まった。民主の上院トップ、シューマー院内総務はウクライナ疑惑に関わったとしてマルバニー大統領首席補佐官代行、ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)ら新旧のホワイトハウス高官4人の証人招致を要求。弾劾裁判を通じて世論の支持拡大を探るが、共和上院トップ、マコネル院内総務は応じない立場を示した。

過去に弾劾裁判にかけられたアンドリュー・ジョンソン、クリントン両大統領はいずれも無罪となった。クリントン氏の場合、与党・民主議員の造反はなく、逆に追及していた共和の議員が弾劾に反対票を投じた。ジョンソン氏のケースでも追及した共和の一部議員が造反し、反対に回った。

クリントン氏の弾劾裁判は約5週間続いた。今回も同じ期間と仮定すれば、2月3日に始まる20年大統領選の中西部アイオワ州党員集会の日程と重なる恐れがある。民主の候補指名を争うウォーレン、サンダース両上院議員は弾劾裁判に出席する必要があり、選挙活動に支障を来しかねない。現職上院議員ではないバイデン氏ら他候補に有利との指摘もある。

クリントン氏は残り2年となる2期目の任期を折り返した時点で弾劾裁判に直面したが、再選をめざすトランプ氏は最大であと5年大統領職にとどまる可能性がある。クリントン氏が率いた90年代の米国は冷戦後の「唯一の超大国」として世界に君臨した。内向きの政争が長引けば、中国との覇権争いなど米国を取り巻く世界情勢に影響する恐れもある。

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]