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海外G1、年間最多8勝 「日本馬強し」は本当か

日本から3頭が参戦した凱旋門賞の本馬場入場。結果は惨敗…

2019年の競馬界を振り返るとやはり、海外での日本馬の活躍が印象深かった。特に、記憶に新しいのは12月8日の香港国際競走。01年以来となる1日3勝は「日本馬強し」を世界に強烈にアピールした。日本馬による海外G1の年間8勝、従来の最多5勝を大幅に更新する新記録樹立、本当に見事だったと思う。

そう思えるのも、こうして19年も終わりを迎え、ここまで時間の経過とともに、多くの日本馬が結果を出してくれたからである。「何を当たり前なことを」と思うかもしれないが、思い出してほしい。実はドバイターフをアーモンドアイが制するまで、日本馬は海外で久しく勝てなかった。17年4月、香港のクイーンエリザベス2世カップをネオリアリズムが制したのが最後。以後、惜しいレースはあったにせよ、勝利はなかった。

遠ざかる凱旋門賞制覇の悲願

日本の馬は強くなった、そう言われ、そう信じて疑わない風潮が広まってはいたが、個人的には「日本馬全体の層は厚くなったのかもしれないが、もしかしたら、トップ層の実力は(世界の中では)案外そうでもないのかもしれない」と、思えてならなかった。

なぜ、そう思ったか? 勝てないにせよ、香港やドバイでは、日本馬の2着3着は当然のようにあり、それなりに結果を出していた。だから、そんなことを考える必要はなさそうなものだが、実はひどい落ち込みを示していた部分もある。ほかならぬ近年の凱旋門賞の結果だ。マスコミを含めた日本の陣営が、あまたある海外G1の中で、制覇に最も執念を燃やしているのは、やはりこのレースだろう。

今年も現役最強馬アーモンドアイこそ早々に遠征を断念したが、一昨年の菊花賞馬でその後もG1で好走を続けたキセキ、前年のグランプリホースであるブラストワンピース、そして18年菊花賞と今春の天皇賞を制したフィエールマンの3頭という、まさに日本を代表するそうそうたる顔ぶれが参戦。だが、結果は全く振るわなかった。キセキの勝ち馬から大きく離れた7着が最高で、ブラストワンピース11着、フィエールマン12着と惨敗。今年も現地で実況、取材を担当し、この現実を目の当たりにして、凱旋門賞と日本馬の距離を改めて痛感させられた。

だが、このレースもかつては一時的に、勝利に非常に近づいていた。長期滞在で臨んだ1999年のエルコンドルパサーは別としても。06年、日本の期待を一身に背負って臨んだディープインパクトは3位入線後失格となりはしたが、実力、強さを十分に世界に示した。12、13年と2年連続2着だったオルフェーヴルも、まさに同様。特に最初の年は、あそこまで行って負けたことが不思議なほど、勝利が目前に迫っていた。

着差だけで測るなら、実は最も勝利に近づいていたのは、10年のナカヤマフェスタだった。直前の宝塚記念を制していたとはいえ、国内での実績はその程度でしかなかった同馬だが、道中馬群でもみくちゃにされながらも、それをあっさり跳ね返し、もしやと思わせる快走だった。関係者が悲願の勝利に執念を燃やし、努力を続けているにもかかわらず、オルフェーヴルの後、まるで通じなくなってしまったこの現実は、一体何なのだろうか。

大観衆でごった返す2016年メルボルンC当日の場内

遠征急増、豪で目覚ましい活躍

一方で、近年遠征が急激に増えたオーストラリアでの日本馬の活躍は、目覚ましいものがある。今年10月にはメールドグラースがコーフィールドカップ、リスグラシューがコックスプレートと2週連続でG1を制し、凱旋門賞ショックを補って余りある成果だった。そういえば春には、日本での実績は重賞1勝のクルーガーがG1で連続好走。ドンカスターマイル(4着)から連戦となったクイーンエリザベスステークスでは、オーストラリアが誇る歴史的名牝ウィンクスに次ぐ2着と善戦し、日本の競馬ファンを驚かせた。

こうしてみると、近年の日本馬が活躍した海外競馬には一つの共通点がある。整地され、アップダウンが少ない馬場・コースだったことだ。ホームの日本はもちろん、ドバイ、香港も特徴は同じ。競馬場が多いオーストラリアも、日本馬が好走した舞台に関しては少なくとも同様である。凱旋門賞など、非常にタフなコンディションになりやすいといわれる欧州のビッグレースで求められる適性と、強くなった(といわれる)日本馬のそれが、完全にずれてしまった、ということなのだろうか。

米国ダートで健闘

一方で、かつてはまるで結果を出せず、遠い存在といわれながら、近年大きく近づいたと思われるのが、米国型のダート競馬である。16年にはラニがドバイのUAEダービー制覇後に米国3冠レースを完走。そのうちベルモントステークスでは僅差の3着と健闘した。

今年に入っても、ドバイ・ゴールデンシャヒーンでマテラスカイが僅差2着。マスターフェンサーはケンタッキーダービーで6着(7位入線)、ベルモントステークスで5着となり、勝ち馬との着差もそれほど大きなものではなかった。「これならいずれは」と思える内容の競馬が、確実に増えている。

ケンタッキーダービー出張時の筆者

所属は米国ながら、日本産のハーツクライ産駒ヨシダが結果を出していることも、それを裏付けているといえそうだ。米国型のダート競馬、実は今の日本馬にとって、非常にフィットしやすい路線なのかもしれない。

色々述べてきたが、あくまで素人の推測である。だが、こんなことを身近に、馬券を買いながら考えられるとは、本当にありがたい時代になったと思う。来年も日本馬の海外遠征は今年同様、いやそれ以上に増える可能性が大きい。どのような舞台に挑み、どんな結果が待っているのか。今年を上回るエキサイティングなシーンの数々を楽しみにしたい。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 中野雷太)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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