広瀬奈々子監督、装幀家・菊地信義の仕事を撮る

文化往来
2019/12/28 2:00
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広瀬奈々子監督「つつんで、ひらいて」(C)2019「つつんで、ひらいて」製作委員会

広瀬奈々子監督「つつんで、ひらいて」(C)2019「つつんで、ひらいて」製作委員会

「夜明け」で今年デビューした広瀬奈々子監督が装幀(そうてい)家・菊地信義を追った新作ドキュメンタリー「つつんで、ひらいて」が公開中だ。五感に訴える本作りに手作業で取り組む菊地の仕事ぶりを通して、紙の本の魅力を伝える。

菊地は40年以上にわたり日本のブックデザインをリードしてきた。手がけた本は俵万智「サラダ記念日」をはじめ、大江健三郎、吉本隆明の著書など1万5千冊以上におよぶ。広瀬は2015年からその仕事ぶりを撮り続けた。

きっかけは菊地の著書「装幀談義」を読んだこと。実は広瀬の亡父も装幀家だったが、仕事の内容はよく知らなかった。「本の中身を外に表出させる、という菊地さんの考え方にひかれた」と広瀬。デジタル化の進展でモチベーションをなくした晩年の父を見ていただけに「手で作業を続けているところにも魅力を感じた」。

印刷工場や製本工場の光景が度々現れる。「わくわくした。こんな小さな本を作るのに、大きな機械が動いている。そのダイナミズムに圧倒された。本が作られる過程の美しさを見せたかった」。古井由吉やモーリス・ブランショの本など、菊地の近年の重要な仕事を追って、たくさんの工場に通い、完成まで4年かかった。

デジタル化の進展は出版も映画もよく似ている。「フィルムに触ったことがないデジタル世代」である広瀬は、水戸部功らデジタル世代の装幀家にも取材し、その意気込みと菊地への敬意を聞き出す。「技術の進化を予算の低減でなく、質の向上につなげたい。彼らがいい本を作るように、いい映画を作りたい」と広瀬。

「創造性とは関係性であるという菊地さんの言葉に救われた。オリジナリティーとは何かともんもんとしていたから。他者がいて、自分がいる。そこを見つめていけばいい」と語った。

(古賀重樹)

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