万博の記憶、想像力の原点 近大学長 細井美彦さん
未来像

関西タイムライン
2019/12/18 7:01
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ほそい・よしひこ 1956年生まれ、兵庫県西宮市出身。87年京都大大学院農学研究科畜産学専攻博士後期課程修了。近畿大の生物理工学部長、副学長を経て、2018年4月学長に就任。専門分野は生殖生理学。

ほそい・よしひこ 1956年生まれ、兵庫県西宮市出身。87年京都大大学院農学研究科畜産学専攻博士後期課程修了。近畿大の生物理工学部長、副学長を経て、2018年4月学長に就任。専門分野は生殖生理学。

■早慶近、マグロ大学、近大万博――。キャッチコピーのインパクトが話題を呼び、志願者数が6年連続で日本一を誇る近畿大学。学長を務める細井美彦さん(63)が大学改革を進める原点に、若い頃に本物に触れ、想像力を養った経験がある。

父親は外国航路の船長だった。ヨーロッパや南アフリカ航路に出ると1年近く家に帰ってこなかった。小学生だった当時は母子家庭のような環境だったが、父親が各国から持ち帰るお土産が楽しみだった。例えばオーストラリアのブーメラン。狩猟に使う木製のブーメランは想像以上に重く大きくて、プラスチック製と比べながら「どんなして作ったんやろ」とわくわくして想像を巡らせていた。

中学時代に大きなインパクトを与えてくれたのは、1970年の大阪万博だ。親や親戚に連れられて行ったパビリオンには、想像もつかない世界が広がっていた。日常生活で黒電話を使っていた時代に、まるでスマートフォンのような無線携帯電話機やテレビ電話があった。他にもリニアモーターカーから温水洗浄便座まで驚きの連続だったが、子供ながらに一番印象的だったのはインド館で食べた本格インドカレー。自分の知らない文化や技術に触れることを純粋に楽しんだ。

当時はテーマパークに遊びに行くような感覚だったが、時間がたって気付いた万博の最大の魅力は、各展示のアイデアが約50年後の現在の生活に溶け込んでいることだ。あの時に自分が見たものがファンタジーの世界ではなくて、未来の社会の一部となっていることを今では実感する。

1988年にダブリンの学会で自身の研究論文のポスター発表に臨む細井氏

1988年にダブリンの学会で自身の研究論文のポスター発表に臨む細井氏

■動物が好きで進学した京都大農学部では、研究室の先輩の背中を見て研究者を志す。一方、学内では学生運動が盛んで、学生によるストライキで講義を受けるのもままならない時期もあった。

大学の教授が微に入り細に入り、何でも教えてくれる時代ではなかった。「君たちが考えなさい」とぽーんと投げられ、そこからは自分自身で調べていくしかない。誰かが答えを与えてくれるのを待つのではなく、やりたいことを自分で見いださなければ何も進まない状況だった。

近年ノーベル賞を受賞した本庶佑先生や吉野彰先生は、まさにその時代を過ごしてきた方々だ。研究設備や環境が整っていなかった時代に世界的に認められる研究へと結びついたのは、学問へのモチベーションの高さだと思う。研究の世界だけでなく、日本は時代とともに便利で豊かな国になったことで「これがやりたい」というモチベーションがより一層求められる時代に変わったように感じている。

■2025年には国際博覧会(大阪・関西万博)の開催を控え、近畿大学では同年に創立100周年の節目を迎える。インバウンド(訪日外国人)の急増など関西を取り巻く環境は大きく変わるなか、グローバル化を競争力の向上につなげる方策を探る。

どの大学でも共通だが、グローバル化は重要なテーマの一つだ。多様性のある環境に身を置くことは語学や文化への理解に加え、新たな刺激を受けるチャンスとなる。こうした刺激は学生のモチベーションや競争心に直結するため、大学側が育む環境をどう整えていくかが大切になる。

関西全体でも同様だ。留学生をはじめ、外国人が思いっきり活躍できる場所が必要となる。学業やビジネスなど様々な分野で彼らの活躍を目の当たりにすれば、国内でも世界基準で競う環境ができる。近年ではアジア圏を中心としたインバウンドが増え、関西への国際的な関心が高まっている。アジアの窓口としての役割を担い、より多くの人のモチベーションを引っ張り上げるバネをつくっていきたい。(聞き手は島田直哉)

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