上海に東山魁夷の障壁画 唐招提寺ゆかりの美術を展示
苦難越え渡来した鑑真への崇敬映す

文化往来
2019/12/21 2:00
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東山魁夷が唐招提寺で鑑真和上像(国宝)を安置する御影堂のために描いた障壁画(ふすま絵)計68枚が、17日から中国の上海博物館で展示されている。鑑真は仏教の戒律を伝えるため8世紀、5度にわたる航海の失敗と不自由な視力を乗り越えて来日を果たした。

今回は鑑真が実際にもたらした釈迦の遺骨(仏舎利)を内蔵する国宝「金亀舎利塔」や苦難の旅程を描いた「東征伝絵巻」(重要文化財)も公開する。鑑真の故郷は上海に近い揚州で、日中両国の文化交流協定の締結40周年の節目に記念すべき"里帰り"となる。

作品の成立までを自ら振り返った著書「唐招提寺への道」によると、魁夷は「和上の強い精神力への讃仰(さんぎょう)の心」から障壁画の制作を決意。幾度もの苦難を超えた鑑真の渡航には、日本の国土の美への憧れもあったのではないかと考え、日本海側の海岸沿いや蔵王、飛騨や立山など厳しい環境の下、スケッチを重ねた。

さらに、3度にわたって揚州や桂林など中国名勝地も取材、国内外合わせて100枚以上の素描を下絵にして、1980年に障壁画を完成させた。唐招提寺に依頼され10年たっていた。

魁夷は「移り変わり、流れて行くものが生命の現れ」であり、「四季の変化はすべての生あるものの宿命の象徴」などと述べている。

御影堂は現在、長期にわたる修復中で、これに合わせる形で障壁画も日本全国を巡回、これまでに100万人が訪れた。

中国での展示は初めて。雄大な中にも繊細さを秘める美を前に、現地の来場者も東洋に共通な自然への敬虔(けいけん)の念に打たれるに違いない。唐招提寺の西山明彦長老は「展示を機に、日中の友好に力を尽くした人々にも思いをはせていただきたい」と述べた。

(毛糠秀樹)

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