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共通テスト記述式見送り 「安心した」「判断遅い」受験生ら

2020年度開始の大学入学共通テストで、英語民間試験に続き、国語と数学の記述式も17日、導入見送りが発表された。記述式は当初から採点ミスが起きる恐れなどの問題点が指摘されていただけに、受験生や高校教諭からは「見送りで安心した」との言葉が聞かれる一方で、「なぜもっと早く決断しなかったのか」と不満の声も上がった。

国立大を目指す東京都大田区の高校3年の女子生徒は、浪人した場合に共通テストを受けることになる。「夏に後輩が受けた共通テストの模試を見せてもらったが、普段解いているテストと全く異なりとても驚いた。これは浪人できないと思っていたから、記述式の見送りで少し気が楽になった」と話した。

足立区の高校2年の男子生徒が通う私立高校では、共通テスト対策で定期試験でも記述式問題を増やしている。「これまで苦手な国語の勉強に時間を割いてきたので、方針を変えるならもっと早くしてほしかった」と嘆く。学校の17日朝のホームルームで担任が記述式見送りを伝えたとき、クラス中からため息がもれたという。

静岡県立掛川西高の駒形一路教諭(国語)は「浪人した場合の負担を考え、安全志向で大学の推薦合格を決めた3年生もいると聞く。なぜここまで判断を引っ張ったのか」と疑問を呈する。ただ、共通テストの記述式で得点するには「型にはめた答えを作れるようになる必要がある」とし「定型文の回答こそがいいものだ、と生徒たちが思い込んでしまう前に見送りが決まったことは不幸中の幸い」と語った。

全国高等学校長協会で大学入試対策委員長を務める石崎規生・東京都立世田谷泉高校長は「結局入試改革の全体像ははっきりしないまま。早く方向性を示して生徒の不安を払拭してほしい」と求める。思考力などを試す記述式の理念に賛同しつつも「50万人規模のテストで大学別の入試のように採点する体制が作れるのか」と話した。

記述式の利用を決めていた都内の私立大の入試担当者は「記述式よりマークシートのほうが採点の公平性は担保できる」としつつも「(見送り発表の)タイミングが非常に遅い」と困惑する。各大学は記述式の利用の有無をホームページなどで公表しており「受験生が混乱する事態を招いた。国はもっと早く判断すべきだった」と憤る。

同じく利用予定だった関西の私立大の担当者は「英語民間試験が見送りになり、同様のことが起きるとうすうす感じていたが、記述式はより幅広く学力を測れるという魅力があり、利用したかった」と残念がる。

大学入試に詳しい東北大の倉元直樹教授(教育心理学)は「過去に記述式を導入しようとした時の議論などを参考にして、共通テストに記述式を導入するか否かも含めて抜本的に見直すべきだ」と指摘している。

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