凋落ウィーワークの隙突くシェアオフィス3社

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2019/12/20 2:00
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 シェアオフィス「ウィーワーク」を運営するウィーカンパニーが上場延期に追い込まれた。ウィーの事業モデルの持続可能性など、投資家からの懸念を払拭できなかったためだ。ユニコーンブームの曲がり角ともいわれる出来事だが、これをチャンスととらえているシェアオフィス企業もある。CBインサイツがまとめた全11社のうち、3社を紹介する。

ウィーは一時は世界で最も急成長し、企業価値も高いスタートアップの一つだった。だが、同社に対する評価は変わりつつある。

新規株式公開(IPO)の申請(後に取り下げ)に伴い2018年の赤字額が19億ドルにも上っていたことが判明すると、同社に厳しい目が向けられ、企業価値は大きく減少した。さらに、共同創業者で前最高経営責任者(CEO)のアダム・ニューマン氏が在職中に問題のある取引に関わっていたことも発覚した。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ウィーの19年初めの企業価値は470億ドルだったが、10月には経営支援を受けるために大株主のソフトバンクグループに株式を売却した。ソフトバンクはその際、ウィーの企業価値を80億ドル相当と見積もった。わずか9カ月で390億ドル目減りしたことになる。

経営を立て直せば企業価値は回復するかもしれないが、今回の事態がシェアオフィス業界全体にとってどんな意味があるのかは定かではない。

ウィーの経験を受け、同業他社の一部は上場に二の足を踏む可能性があるが、多くは自社の可能性が広がるチャンスとみなすだろう。

今回の記事ではCBインサイツのデータを活用し、ウィーカンパニーの凋落(ちょうらく)から利益を得ようと狙うシェアオフィス関連企業を紹介する。

1.IWG(スイス)

IWGはスイスに拠点を置く多国籍企業で、ウィーをウサギに例えるならカメのような存在だ。

IWGは1989年にリージャスの名で創業し2000年に上場したが、一時はウィーと似たような状況に陥った。90年代の好況期にフレキシブル・ワークスペースをIT(情報技術)ベンチャーに貸し出して事業を積極的に拡大したが、バブル崩壊を受けて行き詰まった。米子会社が03年に経営破綻を申請したのを教訓に、緩やかだが着実な成長を目指すようになった。

現在は、法人向けに短期のオフィススペースを提供する複数のブランドを運営する。そのうちの一つ「リージャス」は世界各地にオフィススペースを展開し、「スペーシズ」は連帯感を育める職場環境を提供している。ウィーワークとIWGの物件数はほぼ同じだが、IWGの18年の営業損益は6100万ドルの黒字だった。時価総額は47億ドルとかなり高額だが、それでもなおウィーの減少後の企業価値80億ドルを大きく下回る。

IWGのマーク・ディクソンCEOは米紙ニューヨーク・タイムズに対し、同社が比較的安定しているのは慎重な成長戦略と、ウィーの事業モデルとはいくつかの点で決定的な違いがあるからだと語った。

例えば、IWGはオフィススタッフや技術サポートなどサービス事業の売上高が全体の28%を占めるなど、事業を多角化している。一方、ウィーではこの割合は5%にとどまる。IWGは物件をサブリース(転貸)するのではなく、大家と提携することでリスクを抑えている。

景気が悪化した場合に割高な長期賃貸物件を保有し続けずに済むフランチャイズ方式に乗り出し、さらにリスクを減らそうとしている。例えば、日本の貸会議室大手ティーケーピー(TKP)は今年4月、IWGの日本事業を買収した。IWGのブランドを活用して日本国内でコワーキング事業を運営する。

ディクソン氏はニューヨーク・タイムズ紙にこう語っている。「投資した瞬間から、最悪の事態を想定すべきだ。当社はありとあらゆる状況を経験してきた」

2.米ノテル(Knotel)

フレキシブル・ワークスペースを提供する米ノテルは8月に4億ドルを調達し、ユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の仲間入りを果たした。

同社も事業を急拡大している。16年の創業以来、保有するオフィス物件の総面積は500万平方フィート(約46万平方メートル)に達しているという。3大陸の15都市で物件を展開しており、最終的には進出都市を2倍に増やす計画だ。ウィーほど額は大きくないものの、18年1~7月期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2400万ドルの赤字だった。

同社のトップは長期的には収益化が十分見込める位置につけていると主張する。一部のライバルほどビールやコーヒーなどのサービスに力を入れていないため、ウィーワークなどよりも低価格でスペースを提供できるという。米スターバックスや米マイクロソフトなどスタートアップよりも解約率の低い一流の大企業をターゲットにすることで、安定性を高めたいとも考えている。

ノテルはニューヨークやロンドン、東京など経済の中心である大都市に特化し、差別化を図っている。同社のアモル・サーバCEOは9月、米ニュースサイト、ビジネス・インサイダーに対し「重要なのは実は30(都市)しかない。当社の展開の仕方は一部ライバルに対する大きなアドバンテージだ」と語った。

3.米インダストリアス(Industrious)

米インダストリアスはコワーキング分野のスタートアップだ。13年の創業以来、2億2000万ドル以上を調達し、直近では8月に締め切った資金調達ラウンドで8000万ドルを調達した。

これまではサブリースで事業を展開してきたが、IWGのように大家と提携する方式に徐々に移行している。物件を借りて企業に転貸するのではなく、提携する大家の管理会社になりつつある。

このモデルでは、コワーキング・スペースに改装し、カフェや休憩スペースを設ける費用の大半は大家が担う。インダストリアスは賃料収入の5~7%を管理費として受け取るほか、コワーキング・スペースへの転換に伴う賃料引き上げ分の30~50%を徴収する。同社によると、この仕組みでは売上高は減るが、利益率は約90%になる。一方、サブリース契約の利益率は30%だ。

同社は現在、米国の45以上の都市の90カ所に展開している。20年にはさらに60カ所を開設する計画だ。19年にはニューヨークの高級ジム「エキノックス」と提携し、ジムの一角にワークスペースを設ける方針を明らかにした。

同社は経済の中心地である大都市に特化するのではなく、フェニックスやダラス、アトランタなど新興テクノロジー産業がある中規模都市に力を入れている。共同創業者でCEOのジェイミー・ホダリ氏は8月、インダストリアスは「2~3カ月後に」黒字化するとの見通しを示した。

ホダリ氏は18年のインタビューで「顧客のオフィスでサービスを提供できるようにしなくてはならない」と述べた。「これは膨大な人数にサービスを提供できるより優れた方法だ。テクノロジー拠点とそうでない場所との違いは消えつつあると思う」と話した。

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