共通テストの記述式問題、なぜ見送り 3つのポイント
2020年度に始まる大学入学共通テストを巡り、英語民間試験と並ぶもう一つの目玉だった国語の「記述式問題」に対しても不信が高まり、20年度の見送りが決まりました。現行の大学入試センター試験の問題は全てマークシート式で、文章や数式で答えを書く問題はありません。これでは思考力や表現力を十分に測れないとして国語と数学で各3問、記述式問題が出されることになりましたが、特に問題視されていたのが国語の記述式でした。

(1)採点の精度どう確保
記述式問題の解答は多種多様です。採点基準が想定していない答えが出されることもあり、採点のぶれをいかに防ぐかが課題です。50万人規模が受験し、採点期間が約20日と短い大学入学共通テストにとっては最大の問題でした。大学入試センターから採点業務を受注したベネッセグループの企業は約1万人体制で採点に当たる考えでしたが、能力が十分な採点者を確保できるのか。正解・不正解の判断の統一性を保って公平な採点ができるのか。前例のない取り組みだけに不安視されていました。
(2)自己採点に難しさ
記述式問題は受験生による自己採点が難しいのもマーク式との大きな違いです。特に国語は、正答例などを読んで解答が正しかったかどうかを判断するのに一定の読解力が必要です。入試センターが18年に実施した共通テストの試行調査では、自己採点と実際の採点との一致率が国語で7割程度でした。国立大を目指す受験生らは自己採点の結果を基に出願先を決めるのが普通ですが、自分が何点とれたかがはっきりしないことで、出願先の判断に支障が出る恐れがありました。
(3)費用対効果も疑問
国語と数学の記述式問題は採点のしやすさを確保するため、記述の自由度が低いものになってしまいました。問題の作成方針によると、国語では最大でも120字を上限に書く程度で、使う語句や文章の構成に複数の条件がつきます。数学も文章解答は見送られ、数式などを書くだけになりました。専門家や高校の教員からは「これでは記述式問題とはいえない」との声が聞かれます。多額のコストと手間をかけてまで導入する意味はあるのか。費用対効果の観点からも疑問が示されていました。