生産停滞で薄れる人手の不足感 自動車や鉄鋼で顕著に

2019/12/16 20:54
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企業の生産活動の停滞が雇用情勢にも影を落としている。日銀の12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、製造業の主要16業種のうち自動車や鉄鋼など過半の10業種で9月調査より人手の不足感が和らいだ。逼迫していた労働需給が緩んで賃金の上昇圧力が弱まれば、消費や物価の足を引っ張りかねない。

日銀が16日公表した12月短観の業種別計数で、全規模ベースの雇用人員判断指数(DI)を調べた。人手が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」の割合を引いた値で、マイナス幅が大きいほど人手が足りていない状態をあらわす。製造業全体ではマイナス17と9月調査から3ポイント上昇し、4四半期連続でマイナス幅を縮めた。非製造業はマイナス40で横ばい。

足元で急速に人手の不足感が薄れているのが自動車だ。12月短観ではマイナス8と9ポイント上昇した。マイナス圏ながら、2016年9月の調査以来の高い水準になった。日産自動車は今夏に世界で1万2500人規模の人員削減と生産能力の縮小に取り組むと公表した。国内の一部工場でも期間工の採用を抑える方針だ。

生産用機械の雇用判断DIもマイナス15と6ポイント上昇し、16年12月の調査以来の高水準になった。労働需給の緩みは素材業種にも及び、鉄鋼や非鉄金属などのDIも上昇傾向が鮮明だ。

経済産業省が発表した10月の鉱工業生産指数(季節調整済みの確報値)は前月比で4.5%低下と大幅な落ち込みを記録した。貿易の停滞が長引き輸出が低調なうえ、台風19号に伴う一部工場の操業停止が響いた。厚生労働省によると、製造業の10月の新規求人数は前年同月比で15.6%減り、縮小傾向が続く。短観で製造業の雇用判断DIがマイナス幅を縮小したのとも整合的な動きだ。

労働市場全体でみれば、人手の不足感はなお強い状況だ。ただ、製造業を中心とする労働需給の緩みが続けば、賃金上昇の勢いを鈍らせる要因になり、消費の重しとなる可能性がある。第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「(経済全体の需要と潜在的な供給力の差である)需給ギャップのプラス幅が縮小し、物価上昇にも逆風になる」と指摘している。

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