中国、22兆円の対米輸入増は高い壁 内需鈍く
第1段階合意、未達なら米は関税再発動

米中衝突
2019/12/15 23:00
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【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中両国が13日発表した貿易交渉の「第1段階の合意」は、中国による米国製品の大量購入が柱だ。米政権は中国が今後2年で輸入を計2000億ドル(約22兆円)増やすと主張するが、内需の伸びが鈍る中国にはハードルが高い。未達なら関税再発動のリスクもある。米国の供給能力にも限界があり、二大経済大国の「管理貿易」は市場メカニズムもゆがめかねない。

「中国との取引は極めて巨大だ。農業事業者は大型トラクターを買いに行った方がいいぞ」。トランプ米大統領は13日、「第1段階の合意」を発表した直後、記者団に上機嫌でまくしたてた。

米政府高官は13日、記者団に「中国の米農産品の輸入規模は年240億ドル(2017年)から年400億ドルに拡大する」と表明。さらに「農産品、工業品、サービスを合わせて中国は2年間で輸入額を2000億ドル増やすとも約束した」と明らかにした。

トランプ氏は16年の大統領選時に「中国製品の関税を引き上げ、対中貿易赤字を解消する」と公約してきた。モノとサービスの対中貿易赤字は約3800億ドル(18年)と全体の6割を占める。赤字削減が実現すれば20年の再選を目指すトランプ氏には大きな成果となる。

ただ中国と交わしたとする約束は極めてハードルが高い。米国の対中輸出はモノとサービスで計1900億ドル(17年)で、1年分の規模を2年で増やすことになる。

農畜産品の対中輸出は過去最大でも260億ドル(12年)。輸出額を5割以上増やす計算だが、貿易戦争を受けて米農家は「既に中国以外の供給先を開拓済みで、対中輸出を5割も増やすのは困難」(ワシントンのロビイスト)との見方が強い。

中国の需要も大きな伸びは見込めない。1~9月の輸入はモノとサービスがいずれも前年同期比5%減り、通年でも前年割れが確実。景気減速による一時的現象ではなく、若者人口の急減という構造要因があり、購買力の拡大は鈍る。

米中が「管理貿易」で輸出入を大幅に増やせば日本や欧州など第三国がはじき出される懸念もある。例えば米国の対中輸出の最大品目は航空機だが、ボーイングのシェアが高まれば欧州のエアバスに不利になる。

米国以外の国々から不満が出れば、輸入拡大を重要な外交の武器とする中国にも痛手だ。中国の王毅(ワン・イー)外相は14日、スロベニアで「より多くの優良な欧州製品が中国市場に入るのを歓迎する」と述べ、懸念払拭に努めた。

米政府高官は記者団に「中国が合意を履行しなければ制裁関税を再び発動する」と明言した。中国側は関税の再発動リスクには一切ふれていない。米中の「第1段階の合意」に盛り込まれた貿易拡大策は矛盾に満ちている。

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