産業界、保守党勝利でもなお不安、関税復活に警戒感

2019/12/15 19:30
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【ロンドン=細川倫太郎】英国の下院総選挙で与党・保守党が大勝し、産業界が最も警戒していた欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」はひとまず回避した。ただ、英国がEUと自由貿易協定(FTA)を2020年末までに結べなければ、関税が復活する懸念は残る。関税復活の影響を最も受ける産業である自動車メーカーは、ジョンソン政権に「自由な貿易の保証を」と注文するなど、企業は離脱不安の払拭を求めている。

日産自動車は英北部サンダーランドに英国最大の工場を持つ=ロイター

「霧が少し晴れた」(ドイツ機械工業連盟)。欧州の経済界では、保守党大勝で合意なき離脱の回避にメドがついたことをひとまず歓迎する声が広がる。恐れていた「コービン政権」のリスクが消えたことも経営者を安堵させた。労働党のコービン党首は郵便や鉄道の国有化に加え、法人税や高所得者層の税率引き上げを公約としていたため、「合意なき離脱よりも怖いのはコービン政権」との声も出ていた。

ただ長い目でみれば不安を拭えたわけではない。「英・EUの将来関係の問題を解決できなければ、合意なき離脱の脅威は後にやってくる」。ドイツ産業連盟のヨアヒム・ラング事務局長は13日出した声明で、先行きへの根強い懸念を示した。

「将来関係の問題」というのは、英国とEUが合意をめざす自由貿易協定(FTA)を指す。20年末までに合意できなければ、英国とEUの貿易には世界貿易機関(WTO)のルールが適用され、EU加盟国どうしの貿易には不要だった関税が発生する。

最も困るのは、完成車の多くをEUに輸出する英国内の自動車メーカーだ。ミニなどを英国で生産する独BMWは「問題はEUと英国の間で自由な貿易と、サービスや人の行き来が保証されるかだ」として、円滑な物流の維持を要求する。

年約44万台を生産する英国最大の工場を持つ日産自動車も、合意なき離脱になった場合、欧州のビジネスが「持続可能ではなくなる」とする。「急な貿易規制の変更は英産業へ深刻な影響を与える」と改めてけん制し、FTA締結は不可欠との見方を示す。ホンダは21年までに英南部のスウィンドンの完成車工場の閉鎖を決めた。

関税が復活すれば小売業の影響も大きく、食品や日用品の価格上昇はさけられない。英小売協会のヘレン・ディキンソン最高責任者は「英政府は消費者のために関税のない自由な貿易を維持することが欠かせない」と指摘する。英国では近年、消費不振から老舗百貨店デベナムズが経営破綻するなど、大手小売りの行き詰まりが続いている。

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