アルジェリア大統領に元首相 軍が支える旧体制維持か
【エルサレム=飛田雅則】北アフリカの産油国アルジェリアで13日、アブデルマジド・テブン元首相(74)の大統領選での勝利が発表された。市民らはテブン氏の背後に軍などの旧体制のエリート層がいると批判し、民主化を求めるデモが収束する気配はない。20年続いたブーテフリカ政権が4月にデモで崩壊した後に初めて実施された大統領選だったが、不安定な情勢が続きそうだ。
大統領選は12日に投開票された。テブン氏はブーテフリカ前大統領の政権下で2017年5月、首相に就任したが、3カ月で解任された。選挙戦ではブーテフリカ氏を中心とした旧体制との決別を訴えたが、軍首脳部の支持を得ているとの見方が強い。15日も首都アルジェなどで選挙に不満を抱いた市民らによる抗議デモが続いた。
アルジェリアでは長く「プーボワール」と呼ばれる軍や経済界でつくるエリート集団が石油や天然ガスの富を独占する体制が続いた。集団内で利益を分配する調整役がブーテフリカ氏だったとみられ、軍が後ろ盾となっていた。新たな大統領も軍に近ければ、ブーテフリカ氏の代わりに同様な調整役を担う可能性がある。市民らには新政権も旧体制となんら変わらないとの不満が強い。
アルジェリアは国民の多くがイスラム教徒で、石油輸出国機構(OPEC)の一員。主に地中海を挟んで対岸の欧州諸国へのエネルギー供給国として輸出総額の約9割を石油やガスが占める。
11年に中東・北アフリカ諸国で民主化運動「アラブの春」が広がった際、アルジェリアの支配層は公務員給与の引き上げなどの懐柔策を繰り出した。その後の原油相場の伸び悩みで成長が低迷し、財政状況は厳しくなっている。足元のデモは「アラブの春の第2波」ともいわれるが、前回のような配分強化は難しい。
ブーテフリカ氏は反政府勢力を強権で抑え、内政に一定の安定をもたらした半面、汚職や縁故主義もはびこった。経済改革も既得権益の壁に阻まれ、産業の多角化が遅れた。若者の失業率は20%を超える。社会の不安定化は過激派組織「イスラム国」(IS)などの活動余地を広げかねない。