米中貿易交渉、打算の歩み寄り 構造問題は先送り

貿易摩擦
2019/12/13 23:00
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【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中両国は貿易交渉で「第1段階の合意」に達し、約1年半に及ぶ関税合戦の打開へ半歩踏み出した。新たな制裁関税の発動期限が迫るなか、大統領選へ成果を急ぐトランプ政権と、国内経済の減速に悩む習近平(シー・ジンピン)指導部が歩み寄りを見せた。もっとも中国の産業政策の見直しなど構造問題は手つかずのままで、両国の対立が収束する兆しはなお見えない。

トランプ米大統領は12日、ホワイトハウスに関係閣僚を集めて協議し、15日に予定していた制裁関税「第4弾」の残り(1600億ドル分)の発動見送りや、適用済みの制裁関税(3700億ドル分)の税率引き下げを検討した。

トランプ氏は中国に年400億~500億ドル(4兆3千億~5兆4千億円)の農畜産品を米国から輸入するよう求め、数値目標の設定まで促してきた。これまでの輸入額は2012年の260億ドルが過去最高で、トランプ氏が課したハードルはその2倍近い。中国政府は購入額を後日発表するとしており、どこまで確約したかが焦点の一つとなる。

米国による農畜産品の対中輸出は、中国が課した報復関税の影響で18年に前年比53%も減少した。トランプ氏は20年の大統領選を前に、支持基盤である中西部の農家向けに成果を求められていた。中国による農畜産品の大量購入はトランプ氏の「戦利品」となり、制裁関税の引き下げはその見返りとなる。

トランプ政権は18年7月から中国製品に制裁関税を段階的に適用し、貿易戦争はエスカレートし続けてきた。15日に第4弾を発動すれば、スマートフォンやノートパソコンなど部品のサプライチェーン(供給網)が世界中に広がるハイテク製品も制裁対象となる。供給網の混乱が予想され、「iPhone」を中国で生産するアップルなど米国企業も発動回避を訴えていた。

貿易不振で米製造業の業況が弱含めば、トランプ氏の再選シナリオが揺らぎかねない事情もあった。製造業の景況感指数は4カ月連続で節目の50を下回り「不況」に沈む。ウィスコンシン州など16年大統領選でトランプ氏が逆転勝利した激戦州では、直近1年間の製造業の雇用者数が純減に転じた。貿易戦争の激化に一定の歯止めをかける必要にも迫られていた。

中国は合意の条件として制裁関税の撤廃にこだわってきたが、段階的な引き下げで折り合わざるをえなかったとみられる。交渉内容を知る関係者は「米国は関税取り消しの条件に、中国がとてものめない要求を出してきた」という。

農産物の大量購入にも「市場の需要に基づいて輸入する」「世界貿易機関(WTO)ルールに触れる」と慎重姿勢を示してきたが、米国に押し切られた可能性がある。

交渉終盤では香港での人権尊重を支援する「香港人権・民主主義法」が米議会で成立するなど「人権カード」も加わり、対立の構図は複雑さを増した。中国側は「貿易交渉と直接の関係はないが、もちろん良い影響もない」(前出の関係者)と不満をためこんでいた。

それでも中国が合意に動いたのは、米国による追加関税が減速を続ける自国経済に与える打撃が深刻になっているためだ。11月の対米輸出は前年同月比23%減り、製造業の投資も低迷する。民間企業を中心に東南アジアへの生産拠点の移転も広がる。「15日の期限を逃せば、協議がまとまらなくなる恐れもある」との判断も背中を押したとみられる。

一方、中国の巨額補助金など米国が「明らかな国際ルール違反」(ナバロ大統領補佐官)と批判してきた産業政策の見直しは手つかずのままだ。ホワイトハウス関係者は「20年に合意を目指す『第2段階の交渉』で、中国の構造改革に切り込む」と主張するが、中国側は「国家主権に関わる問題」と応じる兆しはない。

米中対立は次世代通信規格「5G」からの中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の締め出しや、スーパーコンピューターや監視カメラの取引禁止などハイテク分野を巡る覇権争いにも広がる。制裁関税の一部緩和が実現しても、両国の経済関係が元に戻ることは考えにくい。

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