海外口座情報189万件を入手 国税庁、交換制度で
国税庁は13日、海外の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)により、2019年分として日本の個人や法人が85カ国・地域に保有する口座情報約189万件(11月末時点)を入手したと発表した。国税庁は富裕層や企業による国際的な税逃れの監視に力を入れており、入手した口座情報は税務調査などに活用する。

初回の18年分の交換では残高1億円超の口座などの情報を対象とし、19年6月までに約74万件を入手した。2回目の19年分は残高1億円以下の口座なども交換の対象に加わり、入手情報が大幅に増加した。
国税庁によると、7~11月の間に入手した19年分の情報はアジア・オセアニアからが146万件で8割弱を占めた。次いで欧州などの29万件、北米・中南米は9万6千件、中東・アフリカは3万2千件だった。租税回避地(タックスヘイブン)からも情報を得ている。
逆に日本からは64カ国・地域に約47万件の情報を提供した。
交換で得られるのは口座開設者の名前、住所、口座残高などの情報。札幌国税局が手掛けた事案では、投資運用会社の代表者が無申告で海外に保有していた預金口座の情報がCRSによって判明し、追徴課税につながったという。
国税OBの河添博税理士は「CRSで情報が積み上がっていけば海外口座間の資産移動も把握できるようになる可能性があり、国税当局にとってより強力な武器になる」と話す。
日本がCRSで情報を入手できるのは現在95カ国・地域。CRSの制度に参加していない米国との間では、租税条約に基づいて個別に情報を交換している。