米中、分断と対立 世界に火種(ニュースクリップ2019)

2019/12/29 2:00
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G20大阪サミットで会談に臨むトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(6月)=ロイター

G20大阪サミットで会談に臨むトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(6月)=ロイター

2019年は18年から続く米中貿易戦争、そして米欧の相互不信が引き起こした分断に世界が翻弄された一年だった。米国は中国が米国企業などの知的財産権を侵害しているとの理由で対中関税を次々に引き上げてきた。まず自動車やロボット、次に半導体やプラスチック、18年9月~19年5月の第3弾では家電へと対象を広げ、9月の第4弾発動で対米輸出の15%に達した。そのたびに中国が制裁関税を課す関税合戦を繰り広げてきた。

■両国合意で制裁関税見送りも火種は消えず

12月15日に全面発動を予定した第4弾の制裁関税は、直前に両国が合意に達して見送られたものの、米中の対立構造に変化はない。米国は中国を自らの超大国としての地位を脅かす存在とみなしている。米国が中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置を強化し、中国を「為替操作国」と認定するなど、米中対立の領域はハイテクや通貨へも広がった。分断はさらなる分断を生む。

米中貿易戦争ではベトナムやタイなどの東南アジア諸国が中国などから生産移転を狙い、誘致合戦を繰り広げている。ファーウェイを排除しようとする米国の姿勢は、次世代通信規格「5G」導入で同社の技術活用に積極的な東南アジア諸国などと温度差がある。貿易をめぐる対立は欧州にも飛び火する。フランスが導入したデジタルサービス税をめぐり、米国は仏製品に制裁関税を課す方針を示した。

■トルコ問題巡り欧州とも亀裂広がる

中東にも火種を抱える。トルコは米国の制止を振り切り、北大西洋条約機構(NATO)と対立するロシアからミサイル防衛システム「S400」を購入し、7月に搬入を始めた。米国はこれを受け、トルコを最新鋭ステルス戦闘機「F35」の共同開発プロジェクトから排除した。10月にはトルコがシリア北東部のクルド人武装勢力を越境して攻撃に踏み切った。トランプ氏による唐突な駐留米軍の一部撤退決定が事実上の「ゴーサイン」となった形だったが、米議会はこれに強く反発している。マクロン仏大統領が「狂気の沙汰だ」と非難するなど欧州各国とも対立を深めた。

11月にはトルコが拘束してきた過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員のうち欧米出身者を各国に送還し始めた。ミサイル購入やシリア北部への侵攻、東地中海のガス田採掘などで欧米の譲歩を引き出す思惑があったとみられる。その後に開かれた11月の米トルコ首脳会談は一転して友好ムードを演出し、12月の仏独英トルコ首脳会談でも、テロとの戦いを優先する意志を確認した。なんとか決裂は避けられたが、問題は棚上げされたままだ。

NATOも揺らいでいる。マクロン仏大統領は同盟に冷淡なトランプ米大統領と、シリア北部に侵攻したトルコのエルドアン大統領を名指しで批判。NATOが「脳死を起こしている」との発言は大きな波紋を呼んだ。米欧関係をどう立て直すのかが、大きな課題として浮上している。

トランプ氏、史上3人目の弾劾訴追

トランプ大統領は歴史的な弾劾訴追に直面している(16日、ワシントン)=ロイター

トランプ大統領は歴史的な弾劾訴追に直面している(16日、ワシントン)=ロイター

トランプ米大統領による「ウクライナ疑惑」を巡り、米下院本会議は12月18日、大統領を弾劾訴追する決議を賛成多数で可決した。これを受けて上院は1月上旬にも弾劾裁判を始める見通しだ。与党・共和党が多数を占める上院では無罪となる公算が大きいが、2020年大統領選で再選を目指す同氏と、政権奪還を狙う民主との対立は一段と深まっている。

弾劾訴追を受けた米大統領はアンドリュー・ジョンソン、クリントン両大統領に続き史上3人目。両氏は上院の裁判で無罪となった。ホワイトハウスは「(裁判で)完全に無罪が証明されると大統領は確信している」との声明を出した。上院は与党・共和党が過半数を上回る。トランプ氏は出席議員の3分の2以上の賛成が必要となる罷免を回避する見通しだが、世論の賛否は拮抗している。

英国が来年1月にEU離脱の公算 連合王国の行方に課題

英国のEU離脱に反対し、デモ行進する人たち(4月、ロンドン)=ロイター

英国のEU離脱に反対し、デモ行進する人たち(4月、ロンドン)=ロイター

12日の英下院総選挙はジョンソン首相率いる与党保守党が大勝した。ジョンソン氏は欧州連合(EU)からの早期離脱を主張しており、英国はEUと合意した期限である2020年1月末にEUを離脱する公算が大きい。英国の離脱派は、EU加盟国でなくなってもEUと新たな通商関係を構築して混乱を防ぐと主張しているものの、現実的に間に合うのか不安視する声も多い。

離脱を推進する英与党に対し、離脱反対派が多い北部のスコットランドでは英国政府に反発し、独立する機運も高まっている。伝統的に同地域は独立志向が強いとされてきた。ジョンソン氏はEU離脱で「偉大な大国」を取り戻すと主張して選挙で勝利したが、結果的にスコットランドの独立機運を高めることになった。即座に独立が実現する可能性は低いものの、今後連合王国をどう維持するのか、という課題を背負うことになった。

香港で反政府デモ拡大、市民ら100万人 中国支配に警戒

6月9日、香港では中国本土への容疑者移送を可能とする「逃亡犯条例」改正案への反発で市民ら103万人が抗議活動を行った。民主派は中国政府に批判的な活動家らの引き渡しに道を開くとして強く反対した。香港に高度な自治を認め経済的な繁栄をもたらした「一国二制度」を脅かすとして経済界も条例の改正には慎重な姿勢を示した。

抗議活動は過激化し、デモ隊は7月に立法会(議会)を破壊・占拠した。8月には香港国際空港の出発ロビーを占拠し全便が欠航する事態にも発展した。警察は催涙弾などで強制排除を繰り返すほか、実弾を発砲し高校生を負傷させるなどデモ隊と警察の対立は一段と激しくなった。

9月4日、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は「逃亡犯条例」改正案の撤回を表明。テレビを通じた演説では「暴力は解決策にならない」と対話を訴えたが、事態が沈静化する兆しは見えないままだ。

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