与党税制改正大綱の要旨

2019/12/12 20:50
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基本的な考え方

令和の時代において人口減少と少子高齢化がいっそう進んでも、直面する課題を克服し豊かな日本を次の世代へ引き渡さないといけない。海外発の経済の下方リスクの顕在化に備えつつ、イノベーションの促進など中長期的に成長する基盤を構築することが必要だ。

持続的な経済成長には、日本企業の健全な経済展開の促進と、その果実を国内に環流するという好循環が必要だ。好循環の動きを地域に波及させ、地方創生を実現するには地域における熱意と意欲ある取り組みを後押しする必要がある。

人生100年時代を迎え、高齢期の就労拡大や働き方の多様化に対応し、私的年金の加入年齢などの引き上げや中小企業の企業年金の普及・拡大などに取り組む。納税者による自主的かつ適正な申告を確保するための環境も整備する。

デフレ脱却と経済再生 オープンイノベーションを重点的に進めるため、事業会社による一定のベンチャー企業への出資に一定額の所得控除を認める。

収益が拡大しているにもかかわらず賃上げも投資も消極的な企業には研究開発税制などの租税特別措置の適用を停止する措置を強化する。設備投資要件を強化し、賃上げへのインセンティブを通じた税制効果を発揮しやすくする。資本金100億円超の大企業は接待飲食費の特例対象から除外する。

5G情報通信インフラを早く普及させるため、一定の投資について期間を限定して国家戦略として措置を講ずる。ベンチャー企業への資金の流れを強化するため、エンジェル税制を見直す。

中小企業等の支援、地方創生 中小企業からベンチャー企業への出資に所得控除を認める措置をつくる。企業版ふるさと納税の手続きを簡単にするほか、税額控除割合を現行の3割から6割に上げたうえで5年間延長する。

未利用地の活用を促すため、一定の譲渡所得を対象に100万円の特別控除を設ける。

経済のグローバル化・デジタル化への対応 子会社株式の譲渡などによって譲渡損失を生む租税回避に対処するための見直しをする。国際的な租税回避や脱税を防ぐため、国際的な議論を踏まえながら必要な制度を整える。

経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し 確定拠出年金などの加入可能年齢の見直し、中小企業向け制度の対象範囲の拡大といった私的年金の見直しに伴い、税制上の措置を適用する。

少額投資非課税制度(NISA)を見直す。一般NISAは口座開設可能期間を5年延長する。1階部分はつみたてNISAと同様とし、2階部分は安定した資産形成に不向きな商品を除く。つみたてNISAは5年延長し、ジュニアNISAは新規の口座開設を2023年までとする。

未婚のひとり親に寡婦(夫)控除を適用する。寡婦に寡夫と同じ所得制限(500万円)を設ける。住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある場合は控除の対象外とする。

円滑・適正な納税のための環境整備 取引から納付まで手続きの電子化を推進する。消費税の申告期限を1カ月に限って延長する特例を創設する。

▼個人所得課税

金融・証券税制 少額投資非課税制度(NISA)について、つみたてNISAの勘定設定期間を2042年12月31日まで5年延長する。現行の一般NISAの勘定設定期間の終了にあわせ、特定非課税累積投資契約(仮称)に係る非課税措置を創設する。

未成年者口座開設可能期間は延長せずに終了することとし、24年1月1日以後は課税未成年者口座及び未成年者口座内の上場株式等及び金銭の全額について源泉徴収を行わずに払い出すことができる。

エンジェル税制について特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、次の措置を講じる。適用対象となる特定中小会社の範囲に、内国法人のうち設立後10年未満の中小企業者に該当するもので金融商品取引法に規定する第一種少額電子募集取扱業務を行う同法の規定による登録を受けた者を通じて投資されることその他一定の要件を満たす株式会社を加える。

土地・住宅税制 低未利用地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除を創設する。短期所有土地の譲渡をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。

その他 未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除を見直す。寡婦控除について、扶養家族その他その者と生計を一にする子を有する寡婦の要件に、合計所得金額が500万円以下であることを加える。

▼資産課税

所有者不明土地等に関わる課税上の課題への対応 市町村長は土地や家屋について登記簿等に所有者として登記されている者が死亡している場合、現所有者に条例で定めるところにより現所有者の氏名、住所、固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとする。

市町村は一定の調査を尽くしても固定資産の所有者が一人も明らかにならない場合、その使用者を所有者と見なして固定資産課税台帳に登録してその者に固定資産税を課すことができることとする。

租税特別措置等 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、同法の規定により認定を受けた特定高度情報通信等システム導入計画(仮称)に基づき、電波法の規定によりローカル5G無線局に関わる免許を受けた者が、新たに取得した一定の償却資産(法律の規定により主務大臣の確認を受けたもので、取得価額の合計額が3億円以下のものに限る)に関わる固定資産税について、課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする特例措置を22年3月31日まで講じる。

▼法人課税

オープンイノベーションに関わる措置の創設 青色申告書を提出する法人で特定事業活動を行うものが、20年4月1日から22年3月31日までの間に特定株式を取得し、かつ、これをその取得した日を含む事業年度末まで有している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限に、その経理した金額の合計額を損金算入できることとする。

大企業につき研究開発税制その他生産性の向上に関連する税額控除の規定を適用できないこととする措置について見直しを行う。

定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却または税額控除の創設 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、青色申告書を提出する法人で一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者(仮称)が同法の施行日から22年3月31日までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得をして、国内にある事業の用に供した場合その他の場合、当該法人はその取得価額につき、30%の特別償却と15%の税額控除との選択適用ができることとする。ただし税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。

連結納税制度の見直し グループ通算制度へ移行する。適用法人及び適用方法は親法人及び各子法人が法人税の申告を行う点並びに青色申告の承認を前提とする点を除き、基本的に連結納税制度と同様とする。

所得金額及び法人税額の計算では、(1)欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する(2)グループ通算制度の適用法人または通算グループ内の他の法人の所得の金額または欠損金額が期限内申告書に記載された所得金額または欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された所得の金額または欠損金額を(1)の所得の金額または欠損金額とみなして(1)の損金算入または益金算入の計算をする。

欠損金の繰越控除額の計算は基本的に連結納税制度と同様にする。通算グループ内の他の法人の当期の所得の金額または過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額または過年度の欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された当期の所得の金額または過年度の欠損金額を当期の所得の金額または過年度の欠損金額とみなす。

中小企業におけるオープンイノベーションに関わる措置の創設 中小企業で対象法人に該当するものが20年4月1日から22年3月31日までの間に特定株式を取得した場合にはその取得価額の25%の所得控除ができる。

▼消費課税

軽量な葉巻きたばこの課税標準について、葉巻きたばこ1本を紙巻きたばこ1本に換算する方法とする。改正は20年10月1日から実施するが、激変緩和等の観点から、同日から21年9月30日までの間について、改正の対象を1本当たりの重量が0.7グラム未満の葉巻きたばこに限ることとし、その場合の換算方法を葉巻きたばこ1本を紙巻きたばこ0.7本に換算する方法とする経過措置を講ずる。

▼国際課税

法人が特定関係子法人から受ける配当などの額が株式などの帳簿価額の10%相当額を超える場合にはその対象配当金額のうち益金不算入相当額をその株式などの帳簿価額から引き下げる。

▼納税環境整備

振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届け出について、電子申告・納付システム(e-Tax)での申請を可能にし、送信の際に申請をする人の電子署名及び電子証明書の送信を要しない。

異動後も従前の金融機関の口座から振替納税をすると記載したときは異動後の所轄税務署長に対する申告について振替納税を引き続き行うことを可能とする。

▼関税

20年3月31日に適用期限が来る暫定税率(416品目)及び特別緊急関税制度について21年3月31日まで適用期限を延長する。

20年3月31日に適用期限が来る沖縄に関する特例措置(沖縄特定免税店制度)について、22年3月31日まで、適用期限を延長する。

自動車安全部品用イグナイターなど5品目について基本税率を無税とする。欧州・北米航路に就航するコンテナ貨物定期船が国際戦略港湾に入港する際のとん税及び特別とん税について、当分の間、開港ごとに1年分を一時に納付する場合の税率(純トン数1トンまでごと)を現行の108円から54円に引き下げる。

検討課題

年金課税は少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間および世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金をはじめとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランスに留意し、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

金融所得課税のさらなる一体化については、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する観点から意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある方策の必要性を踏まえ、検討する。

小規模企業等に係る税制のあり方は、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

カジノから生じる所得にかかる適正な申告の確保等の観点から、関連する納税環境の整備について、IR事業の開業に向けて今後検討する。その際、事業者の事務負担や国際競争力の確保についても考慮する。

自動車関係諸税については、技術革新や保有から利用への変化等の自動車を取り巻く環境変化の動向、環境負荷の低減に対する要請の高まり等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、課税のあり方について中長期的な視点に立って検討する。

社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置および医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や地域医療の確保を図る観点から、あり方について検討する。

ガス供給業に係る収入金額による外形標準課税については、法人に対する課税の枠組みに、付加価値額および資本金等の額による外形標準課税を組み入れていくことについて、引き続き検討する。

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