ソニー、コンテンツも攻め 映像音楽でM&A4000億円

2019/12/12 22:00
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買収したシルバーゲート社の傘下には「ピーターラビット」のアニメ制作会社もある(ソニー提供)

買収したシルバーゲート社の傘下には「ピーターラビット」のアニメ制作会社もある(ソニー提供)

ソニーが映像や音楽などコンテンツ事業を強化している。このほど「ピーターラビット」のアニメを保有する米番組制作会社を200億円で買収したと発表。2018年4月に吉田憲一郎社長が就任して以来、映画・音楽関連のM&A(合併・買収)総額は4000億円規模になった。スマートフォン向けの半導体センサー事業をテコに復活したソニーは、コンテンツに新たな照準を合わせつつある。

「中国市場拡大への足がかりにもなる」。ソニー幹部は米制作会社シルバーゲートメディアを買収した狙いを語る。同社の傘下にはアニメ「ピーターラビット」の制作会社もある。北京で合弁会社を運営し、中国市場にも強いという。

11月にはテレビ番組を作る米ゲーム・ショー・ネットワーク(GSN)を完全子会社化した。グループで58%の株式を保有していたが、米AT&Tが保有する残りの持ち分を3.8億ドル(約410億円)で取得した。1994年開局のGSNはクイズ番組に強く、ゲームや映画事業での相乗効果を狙う。

18年には「クイーン」などの著作権を持つ米EMIミュージックパブリッシングを約2900億円で買収するなど、ソニーはコンテンツなどIP(知的財産)の強化に動いている。スマホのカメラなどに使う半導体センサーには18年度からの3年間で7000億円を投資する計画で、さらなる上積みも検討する。一方で、コンテンツ関連のM&Aも2年弱で4000億円にのぼった。

コンテンツで稼ごうとする姿勢は会社のバランスシート(貸借対照表)にも表れてきた。IPなどの無形固定資産や営業権(のれん)の合計は9月末で1.6兆円(連結ベース)で18年3月末から5割増えた。

半導体センサーへの集中で業績が改善し、投資余力が高まってきたことが背景にある。19年3月期の連結営業利益は8942億円と2期連続で最高益を更新した。本業で稼ぐ現金を示す営業キャッシュフローは1兆円超のプラスとなり、連結営業赤字だった12年3月期の2倍超の水準だ。

ソニーにとって映画や音楽は家電製品が低迷した苦しい時期に業績を下支えしてきた事業でもある。20年3月期に映画と音楽の利益は合計で2100億円と全体(連結調整前)の2割強を稼ぐ見通しだ。既に半導体やゲームと並ぶ収益源だが、ヒット作の有無で大きくぶれる面もある。旧作を拡充し、配信収入などで安定的に稼げる事業を目指す。

ただ、世界に目を向けると成長分野の動画配信を巡り、米ネットフリックスと米ウォルト・ディズニーなどが覇権争いを繰り広げている。米アップルが11月に「アップルTV+(プラス)」を始めるなど新たなプレーヤーも力をつけている。音楽配信ではスウェーデンのスポティファイ・テクノロジーが攻勢を強めている。

ソニーはネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムなど複数の動画配信プラットフォームにコンテンツを供給する戦略だ。会員獲得のために巨額投資を続けるプラットフォーマーとの正面衝突を避けてコンテンツのサプライヤーとしての生き残りを目指す。

ただ、映画の主戦場の米国ではソニーのシェアは4位とみられる。ディズニーが今年3月までに米21世紀フォックスの映画・テレビ部門を700億ドル超で買収するなどコンテンツ業界ではM&Aが活発で、ソニーの案件は小粒に見える。

ソニー株は12日に年初来高値の7320円をつけるなど17年ぶりの高値圏にある。株価のけん引役はスマホ向けの半導体センサーだが、ソニーは89年に米コロンビア・ピクチャーズ・エンタテインメント(現ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)を買収したこともある。有望なコンテンツを手に入れるために大型M&Aに動く局面もあるかもしれない。

(広井洋一郎、花田幸典、シリコンバレー=佐藤浩実)

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