アラムコ株、連日の高騰 時価総額が一時2兆ドル突破

2019/12/12 18:21
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サウジの改革の旗振り役であるムハンマド皇太子(10月14日、リヤド)=ロイター

サウジの改革の旗振り役であるムハンマド皇太子(10月14日、リヤド)=ロイター

【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビア証券取引所タダウルに11日に上場した国営石油会社サウジアラムコの株式は12日の取引開始直後に前日比でおよそ10%上昇し、時価総額が一時2兆ドル(約220兆円)を突破した。サウジの実力者ムハンマド皇太子が主張してきた企業価値を上場2日目で達成し、メンツを保った。政策を総動員して株価を支える官製相場には危うさがひそむ。

世界の新規株式公開(IPO)史上で最大となったアラムコの上場は当初、内外市場で発行済み株式の5%を公開する予定だった。「アラムコの価値は2兆ドル以上」とムハンマド皇太子は主張したが、市場では「過大評価」という声が広がった。溝は埋まらず、海外上場を事実上断念せざるを得なくなった。

アラムコは国内上場で株式の1%を機関投資家向け、0.5%を個人向けに公開した。個人向けには一定期間保有した投資家にボーナス株を付与する制度をつくった。公開株の1割以上を政府系機関や政府系ファンドが買ったとみられており、政府が「2兆ドル」の看板達成に躍起になっていたことがうかがえる。

サウジ政府は「アラムコには2兆ドルの価値がある」と海外の投資家に訴え、国外上場の機会を改めて探る戦略とみられる。産油国との関係強化をもくろむ中国のファンドなどが株式取得に関心を持っているとされる。

こうした強引な株価下支えは将来の火種となる。個人投資家がボーナス株を得る資格を得られるのは購入から6カ月保有した場合に限られる。この制度のひずみを利用して、期限ぎりぎりに空売りをしかける投資戦略も考えられる。国内の株価を支える優遇策は、海外投資家にとって不利な条件と映る面もある。

石油産業の行方が不透明だという構造的な問題もある。米シェブロンは10日、石油・ガス関連の資産で100億~110億ドルの減損処理をすると発表した。

海底油田やシェールオイルなど、高コストの生産事業の多くは、1バレル60ドル程度の現在の石油価格であれば、十分に利益を生むことができる。しかし、現実には資金調達コストの上昇で、企業が事業からの撤退を強いられている。環境、社会、企業統治を重視する「ESG投資」が広がり、気候変動の原因ともみられる石油会社の株は敬遠されがちだ。

2019年に石油価格を下支えしたのは、皮肉なことに中東の地政学リスクだった。サウジとイランの対立やホルムズ海峡の航行の安全をめぐる懸念が高まった。それでも相場の低迷が続いたのは、世界経済の減速が続き、消費国の石油離れが加速したためだ。

サウジはニューヨークやロンドン、香港、東京などを念頭に海外上場のタイミングを探っている。法的リスクや情報開示の問題もハードルとして残っている。

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