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ホークスへ、巨人へ 今オフは指導者の移籍も盛ん
スポーツライター 浜田昭八

2019/12/15 3:00
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「お前の(打球)飛ばんなあ。オレの方が飛んでいるぞ」と、新生球団楽天の初代監督・田尾安志が新人平石洋介を冷やかした。打撃練習の合間、息抜きに監督も打席に入った。同志社大の先輩、後輩という気安さもあって、関西学生野球のシーズン最高打率の記録を持つ監督が、後輩をからかったのだ。

チームづくりの地ならしをしながらCSにチームを進めた楽天の平石監督(右)だったが…=共同

チームづくりの地ならしをしながらCSにチームを進めた楽天の平石監督(右)だったが…=共同

これが冗談で済まない平石の選手生活だった。現役7年(実働6年)で37安打の打率2割1分5厘、1本塁打、10打点をマークしただけ。2011年に現役を引退し、12年から楽天のコーチ、2軍監督、1軍コーチ、監督代行を歴任し、19年には監督に昇格した。選手としての能力と指導者としての才能は別物と球団は見極め、この貧打者を大事に抱えてきたのだ。

前年最下位からCS出場に導いても"降格"

18年の楽天は最下位だったが、平石が監督をフルシーズン務めた初年の19年には3位に入った。クライマックスシリーズ(CS)でソフトバンクに敗れたが、チームは来季からの飛躍が望める状態になりつつあった。その状態を下地にしてチームづくりに思いを巡らせていたが、球団から続投の要請はなかった。新監督には元ヤクルトの三木肇が呼ばれ、平石には「2軍統括」への転身が求められた。それを断った直後にライバル球団のソフトバンクからコーチ就任の誘いがあった。

楽天の石井一久GM(左)は三木新監督を選手時代から知っている=共同

楽天の石井一久GM(左)は三木新監督を選手時代から知っている=共同

選手の移籍は注目されるが、指導者の移籍はさほど話題にならない。だが、監督が辞任した翌年にすぐ同一リーグのチームの監督やコーチに就任するとなれば別だ。古くは1974年に阪急から近鉄へ移った西本幸雄。最近では99年に阪神の監督になった元ヤクルトの野村克也、02年に阪神監督に就任した元中日の星野仙一がその珍しいケースだ。このほか、10年にソフトバンクのヘッドコーチに就任した大石大二郎は、09年のオリックス監督だった。

監督、コーチが間を置かずに他球団の指導者になってはいけないというルールはない。だが、球界の古老たちは非難めいた声を上げる。元在籍球団の情報を多く抱えている首脳陣には、"守秘義務"があるのではないか。せめて、2、3年は間を開けるべきだと言うのだ。それでなくても、近年はチームに対する忠誠心が希薄になっている。戦力を補完し合う選手の移籍は同一リーグ内でも許されるが、首脳陣は球界の秩序を保つために自制してほしいと考えているようだ。

今回の平石の場合も、それに似た批判にさらされるかもしれない。前球団でCS進出の功績が思ったほどに評価されず、見方によっては"降格"ともとれる2軍統括への転出を要請された。怒りを募らせたとみられる背景もあった。

ソフトバンクは平石氏(右)の育成能力を買い、1軍打撃兼野手総合コーチに起用した=共同

ソフトバンクは平石氏(右)の育成能力を買い、1軍打撃兼野手総合コーチに起用した=共同

松坂を苦しめたクレバーさで高校時代から有名

しかし、平石は若手育成のスペシャリストとしての手腕を、ソフトバンクに買われただけ。古巣の秘密情報の持ち出しを期待されたのではない。球界の古いモラルにとらわれて前へ進まないのは球界にとっても、本人にとっても不幸なこと。指導者は生え抜きの元スターでないと務まらないという理不尽な縛りは、広島の控え捕手だった上田利治が阪急で成果を上げ、とっくに打破されている。

星野が阪神で人気監督になったように、平石はソフトバンクで育成の名手として名を上げると期待されている。楽天では「松坂世代初の監督」と注目された。西武へ復帰した松坂大輔と同い年の39歳。PL学園の主力で甲子園に出場したときには松坂の横浜高と対戦。平石が松坂の投球の癖を見抜き、配球も読んで松坂を苦しめたと噂された。クレバーなことは、高校球児時代から有名だった。プロでは打球をあまり飛ばせない打者だったが、これからは「飛ばす打者」の育成に励む。

丸(右)と話す巨人の石井野手総合コーチも今オフ、ヤクルトから移籍=共同

丸(右)と話す巨人の石井野手総合コーチも今オフ、ヤクルトから移籍=共同

同一リーグ間で間を置かない指導者の移籍ではもう一人、石井琢朗がいる。大洋(DeNA)、広島の選手で24年プレーした。牛若丸吉田義男も認めた好遊撃手。打撃でも2度の最多安打をマークした好打者で、盗塁王のタイトルも4度取った。13年にコーチへ転身して広島で5年、守備走塁、打撃コーチを歴任。間を置かずに18年から2年、ヤクルトで打撃コーチ。そしてこのオフ、またも間を置かずに巨人の野手総合コーチに就任した。平石と同じように、育成の才能はライバルからも注目されていた。

巨人の補強は毎年すさまじいほどだが、ヒット補強の確率が高いとはいえない。大金を投じて外国人選手やフリーエージェント(FA)を取るより、若手育成にかじを切りかえようとしているのではないか。そこで「最大の補強は石井コーチ」だったということになれば素晴らしいが……。

(敬称略)

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