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FRB「利下げなし」 大統領選や貿易戦争で動けず

パウエルFRB議長は米景気の堅調ぶりを強調したが……(11日の記者会見)=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は11日、4会合ぶりに金融緩和を見送り、2020年は「利上げも利下げもゼロ」との政策シナリオを提示した。FRBの目の前には貿易戦争や大統領選といった政治リスクが横たわり、経済も資産バブルと物価停滞という相反する不安がある。米金融政策は、複雑な方程式を前に身動きがとれなくなりつつあるのが実情だ。

「貿易問題が重くのしかかるが、米経済の先行きは良好だ。想定通りに景気が推移すれば、現在の政策スタンスが適切であり続けるだろう」

11日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見したパウエルFRB議長は、7月以降、3会合連続で踏み切った金融緩和を休止する考えを強調した。FOMCの予測では、20年の米成長率は2.0%と底堅さを維持し、失業率も3.5%と歴史的な低さを保つ。3回の利下げで住宅市場に持ち直しの兆しが浮かぶなど、景気失速の不安は和らいだとした。

FOMCが同時に公表した20年以降の政策シナリオは「20年は利下げも利上げもゼロ」となった。貿易戦争で「保険としての利下げ」(パウエル議長)に踏み切ったが、米経済は拡大局面が過去最長の11年目に突入。政策金利は1.50~1.75%まで下がり、参加者17人全員がこれで利下げは打ち止めと判断した。

実際、11日のダウ工業株30種平均は2万7900ドルを超え、過去最高値圏にある。全米の商業用不動産価格は08年の金融危機前のピークを35%も上回る水準に高まり、低金利政策がバブルを生む可能性も強まる。民間企業の債務残高も金融危機前の水準を上回り、FRB内には「金利低下は金融不均衡を助長する」(ボストン連銀のローゼングレン総裁)と、利下げ停止論が強まっていた。

「失業率はおよそ50年ぶりの水準まで下がったが、物価は持ち上がってこない。今は金融政策を緩和状態のままにしておく必要がある」

一方でパウエル議長は、早期の利上げも否定した。FRBはグリーンスパン議長体制だった1998年にも「予防的利下げ」に踏み切ったが、7カ月後には早くも利上げを再開した。パウエル氏は「現在は物価上昇率が目標の2%を下回ったままで、利上げの必要性はほとんどない」と述べ、20年は利上げもゼロとの姿勢を強調した。

世界景気の最大の不安要素である米中の貿易戦争も、完全終結が全くみえない。米サプライマネジメント協会(ISM)の調査では、米製造業の景況感指数は4カ月連続で節目の50を下回って「不況」のままだ。FRBが見込むほど米経済は盤石とはいいがたい。

「貿易問題を注視しているが、金融政策は短期的な事象に対応する手段ではない。もっとも、景気見通しに変更が生じれば、政策面でも対応していく」

パウエル議長は米中の貿易交渉に一喜一憂しない姿勢を強調したものの、FOMCは声明文で「企業の設備投資と輸出は引き続き弱含んでいる」と指摘した。3回の利下げにもかかわらず、ドル相場は高止まりしたままで、緩和効果は現時点では一部にとどまる。

中でもトランプ米大統領を支持してきた中西部の製造業は、貿易戦争で雇用環境が弱含んでいる。そのため20年の再選を最優先するトランプ氏は「ドル高で米製造業が傷んでいる。FRBは追加利下げが必要だ」と執拗に圧力をかけている。

もっとも、利下げは現職大統領を利するだけに「政治からの独立」を標榜するFRBは、選挙イヤーに追加緩和には動きにくい。パウエル氏は22年に1期目の任期が切れるが、しびれを切らすホワイトハウスは今回の「予防利下げ」を先駆けて主張したセントルイス連銀のブラード総裁を、次期議長候補に挙げる。20年のパウエル氏は、景気だけでなくFRBの組織防衛もにらんだ政策対応を迫られることになる。

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