FRB議長「米成長率、2%近辺を維持へ」 会見全文

2019/12/12 6:35 (2019/12/12 8:00更新)
保存
共有
印刷
その他

記者会見するFRBのパウエル議長(11日、ワシントン)=ロイター

記者会見するFRBのパウエル議長(11日、ワシントン)=ロイター

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の終了後に記者会見した。発言は以下の通り。

「まず始めに、今週亡くなったポール・ボルカー氏について述べたい。彼はFRBなどにおける長く輝かしい経歴において多くのことをなし遂げた。2桁の物価上昇率を抑えるべく戦ったのは有名な話だ。繁栄と物価安定の基礎を作り、我々は今日も恩恵を受けている」

「だが、ボルカー氏が最も称賛されるべきは彼の性格かもしれない。彼は公職に勝る職業はないと信じ、人生の大半をささげた。勇敢さと高潔さ、粘り強さを持って、全ての米国人に恩恵が行き渡るような政策を追い求めた。同僚と私は彼のなし遂げた事例から刺激を受け続けている」

「今日の会合の話に移ろう。金融政策の現状維持を決めた。過去3回の会合で0.75%の利下げを実施してきた。我々は常に最大の雇用と物価の安定の実現のために政策を決める。世界で進行中のリスクがあるにもかかわらず、米国経済の見通しは好ましい状態を保っている。昨年からの一連の政策判断により、我々は金融政策が持続的な経済成長、強い雇用、2%の物価目標を支え、米国人に資していると信じている」

「米国の景気拡大は史上最長の11年目に入っている。健全な労働市場、賃金上昇、堅調な消費者態度に支えられた家計支出は引き続き強い。対照的に設備投資や輸出は弱いままで、製造業生産は過去1年超にわたって減少してきた。海外経済の低成長と貿易交渉の先行きが重くのしかかっている。それでも経済全体は緩やかに成長してきた。強い個人消費と金融政策、金融環境が支える形で、我々はこれからも経済が緩やかな拡大を続けるとみる。FOMCの参加者による直近の予測では、実質国内総生産(GDP)の増加率は今後数年で少し弱含むが、2%近辺を維持する」

「失業率は50年ぶりに近い低水準が1年超も続いた。就業者数の増加は底堅い。労働参加率は上昇し、賃金は特に低賃金の仕事で上がってきた。仕事を見つけるのが難しかった低所得者層や中間層は、新たなより良い仕事につけている。雇用機会の創出は、あらゆる人種や教育水準の人に幅広く恩恵が広がっている。これらの改善は景気拡大を維持することの重要性を裏付ける。強い労働市場は取り残された人を減らす。我々は雇用の力強さは続くとみている。FOMC参加者の予測では、今後数年は失業率が4%を下回る」

「物価上昇率は目標の2%を下回ったままだ。10月にかけ過去12カ月超、変動の大きい食料とエネルギーを除いたコア物価上昇率は1.6%だった。確かに低く安定した物価上昇は良いことでもあるが、物価上昇が目標を下回ったままでいることは、長期的な物価上昇期待を下げる不健全な状態につながる。実際の物価上昇率をも下げうる。金利も同様に下がり、下限に近づくことにもなるだろう。利下げの目的は経済を支えることであり、米国人の家庭と企業に悪影響を及ぼす将来の低迷を防ぐことだ」

「我々は強い経済と金融政策を支えに物価上昇率はいずれ2%に上がるとみている。FOMC参加者の予測は20年は1.9%、21年は2%だ。2%目標の達成に向けて尽力する。我々は昨年から、世界経済の減速と貿易問題からくる重要な課題に面し、金利の道筋に対する考え方を大きく変えた。我々は経済の減速の衝撃を和らげ、保険をかけるべく金融政策のスタンスを調節した。物価上昇圧力は予想外に弱まり、より緩和的な金融政策で補った。政策金利の引き上げは1年前は適切だったが、今年は0.75%利下げした。この転換は経済を支え、見通しも保った」

「我々は現状の金融政策が持続的な経済成長、強い雇用、2%目標に近い物価目標を支えると信じている。経済に関する新たな情報が我々の見通しとおおむね一致する限り、現状の金融政策は適切であり続けるだろう。今後も我々は見通しに影響を及ぼす情報とともに直近の政策の効果を注視する。そして適切な政策金利の道筋を評価する。当然、我々の見通しに見直しが必要な事象が起これば、対応する。政策はあらかじめ道筋を決められたものではない」

「最後に国債購入について触れたい。12月に国債購入に関する計画を公表した。これは準備預金を十分な水準に保ち、金融政策に悪影響を与えそうな短期金融市場における圧力を抑制するための技術的な調整だ。今のところうまくいっている。短期金融市場における圧力は最近数週間は抑えられている。年末に向けて可能性のある圧力を取り除くため、金融調節を実施してきた。我々は短期金利を誘導目標の範囲内に収めるための準備ができている」

――失業率が下がってもインフレが加速しないのはなぜか。

「失業率とインフレの関係はどんどん薄れる状況が長年にかけて続いていた。50年前だったら、労働市場が逼迫し、失業率が低下したらインフレが加速していたはずだ。FRBがインフレを抑制するようになってから、この関係が希薄になった。この状況が示唆するのは、今は金融政策を緩和状態にすることで、物価を押し上げる必要があるということだ」

「ただ、失業率とインフレの関係は薄れてきたとはいえ、係数でみれば0.1程度で、これ以上下がるかどうかはわからない。賃金上昇率が3~4年前には2%前後だったのが、今は3.0~3.5%程度で推移している。これは労働市場の逼迫を示すものであるが、インフレについては加速はそれ以下だ。賃金上昇率はインフレ上昇率よりも高いが、両者の関係は依然として存在するといえる」

――利下げ実施の理由を1998年の状況に照らし合わせたが、当時は利下げの7カ月後に利下げを止めた。現在はそれと同じ状況なのか。

「95年と98年にはFRBが利下げをそれぞれ3回実施し、その後利上げを再開した。当時の景気は、やや金融緩和状態を維持することが必要だったが、景気拡大が終わったわけではなかった。現在も同様の状況にあるといえる。今回も3回の利下げを実施したわけだが、最初からそれを計画していたわけではない」

「今回が当時と異なるのは経済状況、特にインフレ率だ。失業率は50年ぶりの低水準になりながらインフレ率はほとんど上昇しない。そのため利上げの必要性が小さいということだ。失業率の低水準がこれだけ長く続きながら物価上昇圧力がないということは好ましい。むしろインフレ率を2%に上昇させることが必要だ。その意味で足元は95年や98年とはきわめて異なる状況だ」

――短期金融市場の逼迫は偶然のものではなく、構造的・規制的要因があると国際決済銀行(BIS)が分析した。

「短期金融市場での資金供給は、非常に重要なオペだ。目的はレポ市場でのボラティリティー(変動)を排除することではない。FRBは資産縮小を実施してきたが、このペースを3月には半分に減速し、7月には停止した」

「同時に大手銀行の準備預金の水準を調査し、各行に最低水準の準備預金の規模について聞き取りを実施した。数値をベースに準備預金の総額を集計したところ9月の水準を大きく下回った。これまで存在していた流動がレポ市場に流入しなかったことがフェデラルファンド(FF)金利に影響を与えた。問題はなぜ起こったかだ」

「支払いの問題、監督当局や規制の問題など注意深く見ている。市場の安全性や健全性を損なわない範囲で監督当局や規制当局の運営のやり方を修正するのはやぶさかでない」

「9月17日から翌日物オペを実施し、10月11日までに一定の計画を実施した。過去数カ月間にはレポ市場は機能し、短期金利は安定している。年末に資金需要が高まり短期市場への圧力が高まるのは異常なことではない。レポ市場でのオペと米財務省証券の購入により、FF金利の誘導に影響を与えるリスクを最小限にとどめるつもりだ。この圧力は統制可能なものと判断している」

――コア消費者物価指数(CPI)が2%に上昇するまでは利上げをすべきではないという議論について、見解を聞かせてほしい。

「現在の我々の政策金利は適切であり、今後発表される経済指標が我々の見通しと一致している限り、同じ政策が続くとみている。金融引き締めをするためには、インフレの水準が一定期間持続することが必要だ。ただ、これを金融政策の先行きの方針にすることはまだしていない」

――FOMC参加者の経済見通しをみると、インフレ率が2%まで上昇するのは、21年末になってからだ。しかし、金利見通しは上昇している。なぜか。

「メンバーはインフレ率2%への上昇を12年からずっと期待してきたが、まだ実現していない。世界のデフレ圧力が予想以上に強いからだ。政策金利の見通しについては、誰も21年の経済状況についてはわからないが、2.5%の中立金利に向けて上昇するのは適切だと考えている」

――この1年、FRBが利下げをするなかでインフレ率は上昇していない。この状況でインフレを目標水準、またはそれ以上に引き上げるための手段があるという自信はどこからくるのか。

「自信については、現時点では自信よりも謙虚さがあると言いたい。世界に目を向ければ米国は主要国の中でも目標に近い方だが、まだ達成できていない。今年は経済は良かったがコアインフレ率は1.6%。一方、昨年は2%に近かった。これは真の難題だが、我々は難題に答えるために最善を尽くしている」

――目標を上回るインフレ率を許容する議論に関して、単にインフレ率を2%以上に上げたいと述べるだけで政策として十分なのか。なんらかの追加の政策措置を必要とするのか。

「(インフレ目標に対する)信頼性をもたらすためには(インフレ率を上げたいと)言うだけでは十分ではなく、政策で支える必要がある。(現在議論中の)政策フレームワーク(枠組み)の変更は、インフレ目標の信頼性を高めることを目的としている。信頼性が高まるとともに、インフレ期待も時間をかけて上昇するだろう」

――USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)における進展は不確実性を解消し、事業投資の改善につながるか。それとも中国との貿易摩擦がまだ影響するのか。どちらの不確実性の方が影響が大きいか。

「政策を評価するのは我々の役割ではない。だた、USMCAが成立すれば貿易政策を巡る不確実性の一部が解消され、経済にとってプラスになる。中国との交渉についても同じことが言える。金融市場の反応をみれば中国との交渉の方がUSMCAに比べて材料視されている。北米自由貿易協定(NAFTA)とUSMCAの違いは、現時点の中国との取り決めと、交渉中の内容との差に比べて小さい」

――経済の先行き不透明感に対する言及が減ったのが声明の唯一の変更となり、不確実性がなくなったことへの自信とも受け取れるが。

「声明の後半では、貿易交渉や、インフレ圧力の低下について指摘している。我々が常に注視してきたもので、対応策も導入してきた。これを再検討したわけではないが、重要な議題であるので言及するのが適切であると考えた」

――FRBの政策決定者は20年中の利下げ実施を見込んでいないが、一部のエコノミストは見込んでいる。

「7月以降、3回の利下げを行った。これは0.75%相当の引き下げだ。金融政策の効果が表れるにはしばらく時間がかかるので、じっくりと待ちたい。米国債のイールドカーブ(利回り曲線)をみると0.75%以上動いているので、強力な措置だったと思っている。見通しの変化が政策変更に値するかどうかは、幅広いデータや情報をもとにFOMCで総合的に判断する」

――中国との貿易交渉が決裂した場合、経済への影響をどうみているのか。

「貿易交渉の動向については注視しているが、反応しないようにしている。金融政策は短期的な事象や変化する可能性のあるものに対応する手段ではない」

――11月にトランプ大統領と会談しているが、彼に何かアドバイスはしたのか。

「個別の会談については話さない」

――トランプ大統領に対する弾劾プロセスが開始されたが、その経済に対するリスクについて議論はしたのか。

「いいえ。そのようなことは考慮しない」

――今年は忙しい1年だったと思うが、振り返ってどうか。来年に向けた教訓はあるのか。

「私は金融政策を正しくすること、来年の経済見通しについて考えることに集中している。現在の金融政策は適切であり、大枠の経済見通しが変わらなければ維持される可能性が高い。経済からは毎年多くの学びがあり、常に生かしていこうと考えている」

――経済や市場について、サプライズ(驚き)はあったか。

「今年直面した課題については、私も含めて誰も予測はしていなかっただろう。18年末ごろは皆、経済成長率は3%程度あるとの感覚を持っていたからだ。だが、経済をこうして支えられていることをうれしく思う。我々の動きが適切であると証明されるだろう」

――賃金の伸びは年初と比べ鈍化している。賃金が力強く伸びない理由は何か。

「主に生産性の伸びの低さが賃金上昇を抑えている。グローバル化で簡単に賃金の安いところに移すことができることも影響しているだろうし、様々な要因があるだろう。また労働市場がそれほど逼迫していない可能性もある。働き盛りの層の労働参加率が上がってきている点をみるとスラック(緩み)がまだ残っているかもしれない」

――労働市場が過熱しているというには、どうなる必要があるのか。

「現在の労働市場は『強い』が、賃金上昇が加速していないので『逼迫している』とは言えないのではないか。過熱しているというには、高い賃金上昇という『熱』が必要だ」

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]