小泉環境相、石炭火力廃止踏み込めず COP25会合

2019/12/11 21:30
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COP25の閣僚級会合で演説する小泉環境相(11日、マドリード)=共同

COP25の閣僚級会合で演説する小泉環境相(11日、マドリード)=共同

【マドリード=安倍大資】第25回気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)は11日、閣僚級会合を開き、小泉進次郎環境相が演説した。国内の自治体の取り組みなどのアピールをした。ただ、国際批判の強い石炭火力発電の廃止など脱炭素に向けた具体策には踏み込まなかった。現状の温暖化ガス削減目標の上積みも見送った。環境派を自任する小泉氏は苦しい立場に置かれている。

「COP25までに石炭政策については新たな展開を生むにはいたらなかった」。小泉氏は演説で、日本の石炭火力に関する政策に変更がないことに言及した。日本の政策に批判があることを「真摯に受け止める」としたが、石炭火力廃止などに踏み込むことはなかった。

一方、欧州では英国やフランス、ドイツなどの主要国が将来の石炭火力発電を全廃する方針を打ち出し「脱石炭」が国際的な流れになりつつある。

2020年から本格運用が始まる国際枠組み「パリ協定」は地球の気温上昇を産業革命前から2度以内に抑えることを目標としている。一方で国連は、各国が取り組む現在の対策では地球の平均気温は産業革命前から3.2度上昇すると分析している。

国連の気候変動枠組み条約事務局のエスピノサ事務局長は「気候変動を止めるには決断とリーダーシップが重要だ」と強調している。

こうした状況の中、温暖化ガスの排出量が多い石炭火力を国内外で新増設する計画を持つ日本への国際社会の批判は強まっている。

日本は11年の東京電力福島第1原子力発電所の事故後、全国の原発が停止し、再稼働が進んでいない。電力会社は代替電源として安価で安定的に発電できる石炭火力の新増設を相次いで表明した事情がある。

小泉氏はCOP25開催前の会見などでも「日本は脱炭素へ大きくかじをきる」と訴えていたものの、厳しいエネルギー事情との板挟みにあっている。また石炭火力発電の認可は経済産業相の権限でもあり、環境相が石炭火力をストップする裁量も限られる。

小泉氏は11日の演説で「日本は5年連続で温暖化ガスの排出量を削減してきた」と実績をアピール。「こうした日本の行動が石炭政策への批判によってかき消され、評価されない。これを変えたいと思いマドリードに来た」と述べた。だが、脱炭素に向けた日本の取り組みは不十分との声は根強い。

小泉氏は政府代表として演説した(11日、マドリード)

小泉氏は政府代表として演説した(11日、マドリード)

企業や投資家が環境を重視する傾向は強まっている。特に石炭火力を見る目は厳しく、国際的に投資を引き揚げる動きが出ている。国連環境計画(UNEP)・金融イニシアチブの末吉竹二郎特別顧問は「石炭火力を維持すると国際社会からみなされるのは、日本企業にとって大きなリスクだ」と指摘する。

末吉氏は「再生可能エネルギー100%の電気を条件とする世界企業も増えている。脱炭素を進めなければサプライチェーン(供給網)の国際化が進む中、日本から出る企業も増える」と懸念する。

日本は30年までに温暖化ガスを13年度比26%減らすという目標を掲げる。しかし現状では達成は難しい。原発事故前には電源構成比のうち3割前後あった原発は、17年度時点で約3%にとどまる。頼みとなる再生エネも15%程度にとどまり、政府が掲げる「主力電源化」には遠い。

日本を尻目にニューヨークで9月に開かれた国連気候行動サミットでは欧州を中心に温暖化ガスの削減目標引き上げへの言及が相次いだ。

国連のグテレス事務総長もCOPの開幕にあたり「化石燃料の時代は終わらせ、気候変動に抜本的な対策をとるべきだ」と呼びかけた。

危機感を持った若者たちも行動を起こしている。スウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(16)が始めた「学校ストライキ」は世界で賛同を集める。9月には世界各地で約400万人がデモ行進するなど、各国の政府へ踏み込んだ対応を求める声は強まる。

11月には中国に次ぐ世界第2位の温暖化ガスの排出国である米国がパリ協定からの離脱を正式に国連に通告した。COP25の開催に冷や水を浴びせ、国の対応には二極化も進む。小泉氏のかじ取りは、かつて環境先進国とみられた日本の復権の鍵ともなる。

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