米、中国の核軍縮参加に固執 新START延長に難色

2019/12/11 18:00
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米ロは財政負担が重くなる軍拡競争を避けたいのが本音だ(10日、ワシントン)=ロイター

米ロは財政負担が重くなる軍拡競争を避けたいのが本音だ(10日、ワシントン)=ロイター

【ワシントン=中村亮】トランプ米政権が核軍縮条約をめぐり中国の参加に固執している。2021年2月に有効期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)について、中国の核戦力増強を抑えられないとして期限延長に難色を示す。軍拡競争を辞さない構えを見せて中国をけん制し、欧州とも連携して中国に核軍縮への参加を迫る。

「世界の戦略的安定に影響を及ぼす全ての当事者を対象に検証可能かつ拘束力のある枠組みにすべきだ」。ポンペオ米国務長官は10日、米ロ外相会談後の記者会見で今後の核軍縮のあり方をこう力説した。ポンペオ氏の念頭にあるのは中国だ。核軍縮は冷戦時代から米国と旧ソ連の2国間で進んできた。ここにきて米国は、中国が核弾頭やその運搬手段であるミサイルの開発を加速させていると警戒を強めている。

ポンペオ氏は米ロに残された唯一の核軍縮条約である新STARTの存続にも難色を示した。新STARTは米ロの戦略核弾頭の配備数をそれぞれ1550発に制限。大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの運搬手段にも上限を設ける。米国防総省傘下の国防情報局は中国が現在は数百発の核弾頭を今後10年間で少なくても倍増させると予測。長期的には米国の優位性を脅かすシナリオを懸念している。

ミサイル開発も警戒する。中国は10月の建国70周年を記念する軍事パレードで、ICBMの東風(DF)41を初めて披露した。DF41は中国本土から米国本土を射程に収める。1発のミサイルに多数の核弾頭を搭載し、米軍も完璧な迎撃は困難とみられる。新STARTに縛られない中国はこうしたミサイルを自由に開発・配備できる。

トランプ政権は17年12月にまとめた国家安全保障戦略で、中国を「現行国際秩序への挑戦勢力」と位置づけて安保・経済で徹底的に対抗する方針を示した。米ロのみを拘束する核軍縮条約は中国の軍拡を許しているとみている。

米国は8月、中国への対抗を主因にあげて米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させた。中国は条約の制約を受けず、米軍の太平洋の拠点である米領グアムを射程に入れる中距離ミサイルの開発を加速させていた。米軍は8月にINF条約が禁止していた地上配備型の中距離ミサイルの発射実験に成功。20年中には同ミサイルの開発が完了する見通しだ。

米国防総省でアジア太平洋地域を統括するランドール・シュライバー次官補は8月の日本経済新聞のインタビューで、INFの配備先として日本が候補になる可能性に触れた。ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の元側近フレデリック・フライツ氏は「トランプ政権が同盟国に求める応分の負担の一環としてアジア諸国にINF配備で協力を求めていく」とみる。

米国のこうした動きに中国やロシアは反発し、対抗措置をとる構えを見せる。米中ロが一斉にINF配備を推進すれば、東アジアの安保環境が不安定になるのは避けられない。米国は軍拡競争で緊張をあおり、核軍縮を求める国際世論を喚起することで中国に核軍縮への参加を促そうとしているとの見方もある。

米国は中国に核軍縮を促すため欧州との連携も強める。12月上旬の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では「中国の脅威」を初めて主要議題に取り上げた。NATOのストルテンベルグ事務総長は中国のICBMや極超音速ミサイルが欧州の脅威にもなりうると指摘した。

ただ、中国外務省の華春瑩報道局長は11日の記者会見で、核軍縮条約交渉に「参加するつもりはない」と話した。

米国務省で核軍縮を担当するクリストファー・フォード次官補は新STARTについて「単純延長であれば理論上はとてもすばやくできる」と指摘する。米国は単純延長の選択肢を残しつつ、中国の出方を探っている可能性がある。核軍縮条約の破棄の旗振り役だったボルトン氏が退任したことで、トランプ政権が軍縮をめぐり柔軟な立場をとれるようになったとの指摘もある。

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