新興の知財「横取り」監視 大企業との取引、公取委調査

2019/12/11 23:00
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公正取引委員会はスタートアップ企業の知的財産やノウハウが不当に大企業に奪われていないか把握する実態調査に乗り出した。共同事業・研究の際、大企業が強い立場を利用して知財を横取りする行為は、独占禁止法上の優越的地位の乱用にあたる恐れがあるとみている。IT(情報技術)分野などで有望な新興企業の成長の芽を摘みかねない懸念もある。

公取委の山田昭典事務総長が11日の記者会見で発表した。現在は「知財やノウハウが保護されていない状況にある」と指摘した。調査対象は創業から10年以内程度の若い企業で、ITやものづくり分野など広く想定。国内に約1万社あるとみられるスタートアップ企業と、取引関係にある大企業に対して書面調査や聞き取りなどで調べる。

公取委は既に一部で聞き取り調査を始めており、スタートアップ側から大企業との協業の際の契約改善を求める声があがっているという。2020年春にも調査結果をまとめ、取り締まりを強化していく方針だ。

スタートアップ企業と大企業の協業では、交渉力や法務の知識に劣るスタートアップが一方的な取り決めや契約を押しつけられがちだ。知的財産の権利を奪われたり、まねされたりする例が後を絶たない。

スマートフォン専業証券ワンタップバイ(東京・港)創業者の林和人氏は02年に中国株専業ネット証券会社を創業し、業界に先駆けた最新システムを取り入れたが、事業に夢中で特許取得の意識はなかった。模倣した大手に追随されて業績が悪化し、会社を手放した経緯がある。林氏は「特許が大事だと分かった」として13年以降、スマホなどの「画面を3回タップしただけで株を売買できる技術」など数々の特許を登録しているという。

農業の生産情報管理システムを手掛けるスタートアップ企業の経営者は、電機大手が販売し始めたスマート農業向けアプリにあぜんとした。自らが開発したアプリとほぼ同じで、しかもその電機大手は機密保持契約を結び、協業してきた相手だったからだ。協業を理由にその企業はノウハウをすべてオープンにしていた。

特許訴訟に詳しい小笠原匡隆弁護士によると、ここ2年ほどでスタートアップ企業から知財に関する大企業とのトラブルの相談が増えているという。特に多いのがIT分野の被害だ。大企業自身との協業だけでなく大企業と契約するコンサルタント会社が顧客を装い、知財情報を聞き出す悪質なケースもあるという。

公取委は中小企業と大企業の取引実態を問題視してきた経緯がある。19年6月には、製造業分野で大企業が中小企業に不利な契約を押しつけることが優越的地位の乱用にあたる恐れがあるとの見解を示している。

大企業にとって、IT分野などで革新的な技術を持つスタートアップとの連携は新規事業開発の核になる可能性を秘めている。政府も大企業と中小企業の連携によるオープンイノベーションの強力を推進するが、公平なルールや環境整備が重要になっている。

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