保険・投信「ワンストップ」で、金融審が規制緩和案

金融最前線
2019/12/10 20:00
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金融庁は10日の金融審議会で、住宅ローンや保険、投資信託などの金融商品を「ワンストップ」で販売できるよう規制を緩和する報告書案を示した。利用者にとってはスマートフォンの1つのアプリから、いろいろな金融商品を購入できるようになる。金融商品を選ぶ手間が省けるメリットがあるが、利用者保護などの課題も残る。

金融審の作業部会は年内に報告書をまとめる。キャッシュレス化などで、個人が求める金融サービスは変化しており、異業種の参入を後押しする。金融庁は2020年の通常国会に関連法の改正案を提出し、21年度以降の施行をめざす。

まず新規参入するインターネット関連の金融仲介業者などを念頭に、銀行や保険など業態ごとに分かれた登録制度を一本化する。商品供給元の金融機関からの個別指導を義務づける仕組みもはずし、仲介業者の負担を減らす。

想定するのは、個人がスマホのアプリで業態をまたいだ金融機関のメニューから商品を購入するようなサービスだ。ネット上で住宅ローンや保険、投資信託など商品の特性や手数料を比較し、自分にあった商品を選びやすくなる。扱う商品の種類が増えるほど利用者の選択肢は広がる。

ITを活用した新ビジネスの登場も見込まれる。たとえば仲介業者が利用者の預金残高などのデータをもとにニーズを予測し、個人の生活設計に適した融資や運用商品を提案するといったことが考えられる。

欧米では「チャレンジャーバンク」と呼ばれる銀行の免許を持つスタートアップ企業が相次ぎ台頭している。銀行や保険など業態ごとに分かれている登録制度が一本化されれば、スマホ上でサービスを一括で消費者に提供できるようになると国内のフィンテック企業はみている。

スマホ決済のKyash(キャッシュ、東京・港)は「モバイル上で送金や決済、保険、投資、給与の受け取りなど横断的にサービスが提供できるようになる」という。これまでは規制が壁となりプラットフォーム(基盤)としてサービスを柔軟に設計するのが難しかった。

金融庁は利用者を保護するため一定の制限も設ける。原則として仲介業務に限り、利用者から保険料などを受け取ることを禁止する。デリバティブや外貨建て保険などリスクの高い商品は扱えないようにする。売上高など事業規模に応じた供託金を確保し、利用者の資産を保全することも義務づける。

送金事業者の規制も大幅に見直す。厳しい規制を課された銀行とは別に、現行では資金移動業者として登録すれば一度に100万円を限度に送金を手掛けることができる。これを送金額に応じて(1)100万円超の高額送金(2)現行と同じ(3)数万円までの少額送金――の3つに分ける。

高額送金は自動車の購入など個人による高額商品・サービス決済や企業間決済で利用しやすくなる。ただし高額送金ではマネーロンダリング(資金洗浄)などのリスクも高まるため、登録制に加えて金融庁による認可取得も求める。

少額送金については現行規制を緩和する。利用者から預かった金額と同額を供託させる義務を免除する。

【専門家の見方】
深野康彦・ファイナンシャルプランナー 窓口の一本化で消費者の利便性は高まり、アプリの活用により時間や場所の制約も減る。少数の金融機関が寡占する地方では競争を促しサービスを高める効果を期待できる。
 ただし金融商品の取り扱いは分野ごとに高い専門知識を求められる。1つの窓口でそれが可能なのか、中立・公正な立場で販売できるかには疑問が残る。人工知能(AI)など新技術の活用をうたう企業もありそうだが、実力を正しく評価する尺度は未確立だ。サービスを使いこなすには利用者が金融への理解をより深める必要がある。

フィンテックに詳しい落合孝文弁護士 スタートアップなど仲介事業者にとっては、ネット上の使いやすい仕組みづくりという得意分野を生かし、商品販売などができるようになるという期待がある。
 制度設計上は顧客の資金は預からず、リスク性の高い商品を扱わない見通しだ。消費者が被害を受けるリスクは限定される。
 ただ、仲介事業者が金融機関から得る報酬(手数料)などについて情報を開示し、透明性や中立性を確保するのは重要な課題だ。既存の金融機関とも連携して、適切な自主規制をできるかどうかも問われる。具体的な対応策を丁寧に検討すべきだろう。

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