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「最強女王」鈴木とMVP渋野 熱き戦い、最後まで
編集委員 吉良幸雄

2019/12/11 3:00
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今季の女子ゴルフツアーは最後まで大きな盛り上がりを見せた。最終戦のLPGAツアー選手権リコー杯(1日まで、宮崎)では、鈴木愛と渋野日向子、史上初めて平均ストローク60台をマークした申ジエ(韓国)の賞金女王争いがギャラリーの目をくぎ付けにした。新聞、テレビ、雑誌などメディアが殺到。最終日のテレビ平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は今季最高の13.6%を記録、ファンの関心の高さを示した。

(左から)渋野日向子、鈴木愛、申ジエによる賞金女王争いは最終戦のツアー選手権リコー杯までもつれた=共同

(左から)渋野日向子、鈴木愛、申ジエによる賞金女王争いは最終戦のツアー選手権リコー杯までもつれた=共同

最終戦前までの賞金ランキングは1位鈴木、2位申、3位渋野の順。鈴木に1511万円水をあけられていた渋野が女王に戴冠するには、優勝か単独2位に入るのが最低条件だった。鈴木は単独2位なら2人をかわして逃げ切れるのだから、かなり優位だったのは間違いない。

ところが前週の大王製紙エリエールで逆転勝ち、今季5勝目(全英女子オープンを含む)を挙げたばかりの渋野は勢いもあり、しぶとかった。初日から3日目まで3位をキープ。最終日は首位を2打差で追い、逆転Vで賞金女王か、と期待を膨らませた。

ただ、本人は大会前から「女王への意識はない」と無欲を強調していた。これにはわけがある。8月の全英女子で、樋口久子以来42年ぶり2人目の海外メジャー制覇の快挙を達成。しかしワールド・サロンパス杯に続き国内メジャー2連勝のかかった9月の日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(兵庫)で「結果を出さなきゃいけない」と自分にプレッシャーをかけすぎ、33位に終わったことが苦い薬になったらしい。オーバーパーなしの連続ラウンド記録も、「29」で途切れた。

だが肩の荷が下りたのだろう。「何かが吹っ切れ」、デサント東海C(愛知)で8打差から大逆転Vをやってのけた。11月の伊藤園(千葉)で8カ月ぶり3度目の予選落ちを喫し、悔し涙を流すと、「賞金女王」を封印。翌週の大王製紙エリエールの優勝につなげた。

ボギーやダブルボギーにめげない反発力、気持ちの強さが渋野の強み=共同

ボギーやダブルボギーにめげない反発力、気持ちの強さが渋野の強み=共同

彼女の活躍で有名になったゴルフ用語が「バウンスバック」。ボギーか、それより悪いスコアとした直後のホールでバーディー以上のスコアを獲得する率がバウンスバック率だが、今季の渋野は断トツだった。ボギーやダブルボギーにめげない反発力、気持ちの強さを示す数字ともいえよう。

4月のKKT杯バンテリン(熊本)では初日81をたたき最下位発進しながら、2日目に66をマークし予選を突破した。デサント東海C、エリエールの優勝も鮮やかな「バウンスバック」だった。

フェアウエー上の笑顔から一変、眼光鋭くピンに狙いを定めてショット、強気のパットでカップに沈める。平均バーディー数は1位、パーオンしたホールでの平均パット数は2位。各大会の成績などをポイント換算したメルセデス最優秀選手賞(MVP)を手にした。

フェアウエー上の笑顔から一変、眼光鋭くラインを読む渋野=共同

フェアウエー上の笑顔から一変、眼光鋭くラインを読む渋野=共同

今後の課題については「やっぱりアプローチかな」と渋野。リコー杯でもグリーン周りから寄せきれず、ボギーをたたく場面が何度も見られ、4打差の敗戦につながった。2年前から師事する青木翔コーチの指導でオフに特訓したが、まだバリエーションが少ない。サンドウエッジ以外にも、ピッチングウエッジや9番アイアンの転がしなども練習しているが、試合本番で使うとなると自信がない。

「アプローチには、まだ時間がかかる」と同コーチは話す。それでも「課題」は「伸びしろ」の裏返しだ。21歳は昨夏に2度目のプロテストで合格したばかり。経験も浅いのだから、寄せ技を磨き続け、来季の一段の飛躍が待ち望まれる。

2019年のヒロインはツアーが終了しても大忙しだ。12月6日には故郷・岡山へ凱旋。岡山東署で一日警察署長を務め、岡山市民スポーツ栄誉賞、岡山県スポーツ特別顕彰を受けるなど駆け足で市内を動き回った。各種の表彰式やスポンサー関係などの「お仕事」もまだまだ残っている。世界ランクは現在、畑岡奈紗(5位)に次ぐ2番手の12位。東京五輪出場を目指し、20年は2月の米ツアーから始動する予定という。

2年ぶり2度目の賞金女王に輝き喜ぶ鈴木=共同

2年ぶり2度目の賞金女王に輝き喜ぶ鈴木=共同

「令和のシンデレラ」の壁となり、2年ぶりに女王に返り咲いた鈴木の終盤戦の快進撃は圧巻だった。左手首痛など故障で1カ月のブランクがありながら、米ツアーを兼ねたTOTOジャパンクラシック(滋賀)をはさみ、11月には史上2人目の3週連続優勝の快挙を達成した。年間7勝は1988年のツアー制施行後では不動裕理(03年10勝、04年7勝)、イ・ボミ(15年7勝)に次ぎ史上3人目だからお見事というしかない。

エリエールは2位。高麗グリーンに苦しんだリコー杯でも最終日はパットを修正し、12位から5位に追い上げた。平均パット数は「壁ドンパット」の渋野を抑え1位。誰よりも遅くまでパッティンググリーンに居残ってボールを転がす豊富な練習量が「最強女王」を支えている。

米ツアー登録は見送ったが、20年は「米ツアーの出られる試合は積極的に出て、挑戦したい。女王の次の年が大事。来年も女王争いができるように」。国内戦はもちろん、海外メジャーなどで好成績を残して世界ランク(17位)を上げ、五輪代表入りを目指す。

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