ボルカー元FRB議長悼む声 金融界から相次ぐ
【ニューヨーク=伴百江、関根沙羅】8日にボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長が死去したことを受けて、金融界や政界から悼む声が相次いだ。ボルカー氏は、1979年から8年間にわたりFRB議長を務めた。FRBの任務遂行における政府からの独立性を重視し、大胆な金融引き締めによって物価高騰を抑制した功績で知られる。
パウエルFRB議長は9日の声明で、ボルカー氏は「公的な仕事が最も価値のある職業だと信じていた」と述べ、同氏の人生は「高潔さ、勇気、そして米国民にとって最善のことをする決意という高い理想を実証した」と功績をたたえた。
英イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁は「同世代の中央銀行総裁のなかでも突出した人物だった」とし、「インフレとの戦いで彼が示した高潔さと独立性は、困難な時期において米国、そして世界を率いることに貢献した」と述べた。
ボルカー氏は、2008年の金融危機直後のオバマ政権下で経済再生諮問会議の議長を務め、金融機関のリスク取引を制限する「ボルカー・ルール」を立案した。オバマ前大統領は9日、ボルカー氏のおかげで「我々の金融システムはより強く、安全で、米国民にとって責任説明のあるシステムになった」とツイートした。
世界最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏は「インフレ鎮静は多くの人の痛みを伴うものでもあったが、ボルカー氏はそれを断行した勇気の人だった」と話し、同氏の死を惜しんだ。
ボルカー氏を「金融市場のヒーロー」とあがめるダリオ氏は、昨年11月にボルカー氏との対談をビデオに収め、今年2月に動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開した。
米政府の分断や競争力低下への危機感を共有した対談の動機について、ダリオ氏は「(ボルカー氏は)誰よりも長く世界の金融市場の中心に身を置いてきた。偉大な生き証人の貴重な洞察をこの映像でとらえたかった」と語った。この動画は口コミで広まり、硬派な内容にもかかわらず、異例の人気を博し、再生回数は20万回を超えた。