出光、全国で給油所改革 社長「ブランド統一検討」
EVシェア事業、22年度までに

2019/12/10 0:00
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出光はEVカーシェア事業を給油所の新たな収益源にする(東京都江東区)

出光はEVカーシェア事業を給油所の新たな収益源にする(東京都江東区)

4月に昭和シェル石油と経営統合した出光興産は人口減少によるガソリン需要の先細りに備え、給油所改革を急ぐ。電気自動車(EV)のカーシェア事業を2022年度までに全国展開する方針。2社で異なるブランドの統一も検討する。規模で上回る欧米の石油メジャーは再生可能エネルギーの開発など事業構造の転換で先行する。改革は時間との戦いになる。

木藤俊一社長が日本経済新聞の取材で明らかにした。EVのカーシェアは「オートシェア」の名称で8月から岐阜県高山市などで実証実験を始めている。20年には千葉県でも導入する予定。22年度までに可能な限り、事業範囲を全国に広げる。

木藤社長は「ざまさまな場所に収益の柱を立てていく」と構造改革を急ぐ方針を強調した(東京都千代田区)

木藤社長は「ざまさまな場所に収益の柱を立てていく」と構造改革を急ぐ方針を強調した(東京都千代田区)

EVはガソリン需要を押し下げるため、出光はこれまで積極的ではなかった。ただ、EVの点検や洗車などは従来のノウハウが使えるほか、車両の貸出料を含め、給油所の新たな収益源になると判断した。現行の消防法では手狭な給油所はEVの充電機器を設置できないため、付近の道の駅などを活用する。フランチャイズチェーン(FC)展開も視野に入れる。

出光の「アポロマーク」(右)と昭和シェルの「ペクテン」

出光の「アポロマーク」(右)と昭和シェルの「ペクテン」

一方で、給油所のブランドを巡っては、木藤社長はこれまで出光の「アポロマーク」と昭シェルの「ペクテン」を「当面は併存させる」と強調していた。今回の取材では「統一を検討する」と述べた。給油を割引するカードを共通化するなど、販売戦略の足並みをそろえることで、集客効果が期待できるとみている。

ブランドの統一に方針転換した背景には、17年4月に誕生した国内元売り最大手、JXTGホールディングスの存在がある。JXTGは複数の名称があった全国約1万3千の給油所のブランドを6月までに「ENEOS」に統一し、顧客からは「分かりやすくなった」との評価も出ている。

木藤社長は「給油所を運営する販売店からも(一本化の)要望がある」ことを明らかにした。統合効果を急ぐライバルに対抗し、顧客をつなぎ留めるためには、出光もブランドの一本化が不可欠と判断した。「アポロマーク」にそろえる方向が有力視されている。

出光は22年度を最終目標とする3カ年の中期経営計画で石油、石炭といった化石燃料事業に依存する事業構造からの脱却を打ち出した。営業利益に占める比率を現在の約7割から30年度までに5割未満に引き下げる。

環境問題などに対応し、有機ELパネルの発光材料といった高機能材を軸に成長路線を維持する。3年間で計1千億円の投資枠を新設、アグリバイオ分野などでM&A(合併・買収)も検討する。「オンリーワンの技術を生かせる事業に進出する」(木藤社長)考えだ。

ただ新たな収益源の開拓には一定の時間を要するため、石油元売りは主力事業のてこ入れを急ぐ。JXTGは7月に大阪製油所(大阪府)の石油精製事業の終了を発表した。出光は製油所の統廃合には踏み込んでおらず、太陽光パネル事業なども再建途上で「既存事業の選択と集中を進める必要がある」(大和証券の西川周作シニアアナリスト)との指摘もある。

出光は昭シェルと15年に経営統合を発表したものの、出光の創業家の反対でようやく4月に実現にこぎ着けた。この期間に海外の石油メジャーは着々と構造転換を進め、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは液化天然ガス(LNG)や再生エネなどの利益がすでに石油開発の事業を抜いた。

国内の石油元売りはJXTG、出光の2社で販売シェアの約8割を握る。ガソリン価格の安定で市場は堅調だが、国内の石油需要は20年後に半減する見通しだ。投資資金が潤沢なうちに、中長期的な成長戦略を描く必要に迫られている。

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