米イラン、拘束者を相互釈放 歩み寄りには難題
制裁・ミサイル開発で溝 対立は根深く

2019/12/9 19:56
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【ワシントン=中村亮、ドバイ=岐部秀光】対立を続ける米国とイランの間で拘束者の相互釈放が実現した。トランプ米大統領とイランのザリフ外相は双方の対応を評価し、関係改善への期待も浮上する。しかし、米国による経済制裁やイランの核やミサイルの開発問題をめぐる双方の不信感は根深く、相互の歩み寄りは難しいのが実情だ。

イランのロウハニ大統領(右)とトランプ米大統領=AP

釈放は7日、両国政府がそれぞれ発表した。イランは2016年にスパイ容疑で拘束した米国人大学院生、シユエ・ワン氏を、米国は経済制裁に抵触したとして18年に拘束したイラン人科学者マスード・ソレイマニ氏を解放した。米政府高官によると、約1カ月にわたる交渉の末にスイスで拘束者の交換が実現した。

トランプ氏は7日、ホワイトハウスで記者団に拘束者の交換を「イランにとってすばらしいことだ」と評価した。ザリフ氏もツイッターで「全ての当事者に感謝したい」と書き込んだ。トランプ米政権の発足後に両国の高官が双方の対応を評価するのは異例だが、関係改善に直結する可能性は低い。

トランプ政権は18年5月にイラン核合意を離脱して経済制裁を再開した。ウラン濃縮やミサイル開発の停止などを含んだ新しい枠組みの構築を主張するが、イランは協議を拒否している。

トランプ氏は7日「我々が今後なし遂げられることの前兆だ」とも語り、イランとの対話に意欲を示した。拘束者の釈放に応じ、20年の大統領選に向けて外交の成果を狙った可能性がある。イランとの対話を電撃的に始められれば外交の手腕を支持者に訴えられるとの計算も働く。野党・民主党による弾劾調査から世論の関心をそらす効果も期待できる。

しかし、イラン国内では米国との対立激化と経済悪化の過程で、ロウハニ大統領ら穏健派の力が大幅に後退し、反米強硬派が勢いを増す。イランが関係改善で譲歩する余地は限られる。

イランでは11月にガソリン価格の引き上げをきっかけとしたデモが全土に広がった。現在、イランの最大の関心は欧州から経済支援を引き出すことにある。ロウハニ師は8日に発表した予算案について「抵抗のための予算」と指摘した。最高指導者ハメネイ師は「反米」によって国民が結束することを呼びかけ、体制を維持する構えだ。

イランは米国に対抗し、段階的に核合意からの逸脱を進める。米国内ではイランによる核武装を防ぐための先制攻撃論が説得力を持つ可能性がある。

米国防総省傘下の国防情報局は11月の報告書で、国連によるイランへの武器禁輸措置が期限切れとなる来年10月以降も延長すべきだと訴えた。措置が解除されれば、イランが精度を高めた弾道ミサイルを配備し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を目指すと警鐘を鳴らした。一方でイランはミサイル開発を推進する考えを堅持している。

トランプ政権は今年5月にイランの脅威に対抗するとして空母や戦略爆撃機を中東に相次いで派遣。イランが米国の無人機を撃墜すると米国はイランに空爆を一時検討するなど緊張が高まった。9月下旬の国連総会に合わせて米国とイランの首脳会談を開くとの観測が広がったが実現しなかった。

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