外資の対中投資、水増しか 最大12%も元高設定
安定演出の可能性 投資判断に影響も

2019/12/9 18:47
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【北京=原田逸策】中国商務省が毎月公表する、外資企業の中国に対する直接投資統計に水増しの疑いがあることがわかった。人民元建てとドル建てで投資額を公表するが、人民元からドルに換算する時の為替レートを市場実勢より最大で12%も元高に設定していた。米中貿易戦争が外資の投資に影響しないと訴えるため、ドル建て投資額の安定を演出した可能性がある。統計の信頼性が損なわれれば、投資判断にも影響しかねない。

対中直接投資は以前はドル建ての金額だけ公表していたが、2014年1月分から元建てとドル建ての両方で公表している。正式な金額は元建てだが、多くのエコノミストや海外メディアはドル建ての増減率に注目する。

18年8月の投資額をみると、元建ては637億元で前年同月を1.9%上回り、ドル建ては104億ドルで同11.4%増えた。しかし市場レートで換算するとドル建ては93億ドルと前年同月の水準を下回っていた。プラスとマイナスでは印象が大きく異なる。

商務省は「投資1件ごとに実行時の為替レートを適用している。同じ月でも特定のレートを一律に適用することはない」と説明する。とはいえ18年8月の商務省の適用レートは平均で1ドル=6.11元で、当時の市場終値平均(同6.85元)と比べると12.1%の元高・ドル安だった。

「18年8月の元高ぶりは突出している。国際収支統計で適用している為替レートと比べても高い」と中国経済の研究者は疑いの目を向ける。何があったのか。18年7月に米国が中国製品に追加関税をかけると、共産党中央政治局は同月末に「6つの安定」という経済運営の基本方針を決めた。雇用、貿易などと並んで「外資の安定」も盛った。対中投資の安定という意味だ。

国内総生産(GDP)が代表例だが、中国では政治目標に掲げた経済統計は改ざんされやすい。政治局決定の翌月に外資投資が前年割れでは、商務省のメンツも丸つぶれだ。18年8月の適用レートが大幅な元高となった背景には、こうした政治的な事情もあった可能性がある。

さらに14年1月以降、各月の商務省の平均適用レートを算出し、上海市場終値の平均と比べてみた。全70カ月の8割にあたる56カ月で市場レートが前年同月より元安ならば商務省レートは市場より元高、市場レートが元高ならば商務省レートは元安に設定されていた。

元相場は14年1月に直近のピークを記録し、その後は元安傾向だ。元安によるドル建て投資額の目減りを打ち消すため、元高に設定される回数が多くなったとみられる。商務省レートが市場実勢からどのくらい離れているかを14~19年の各年で計算すると、18年が3.7%と最大だった。

為替レートの助けもあり、18年8月から19年10月までに毎月のドル建ての投資額は1度しか前年同月の水準を下回っていない。一件一件の投資額に大きな開きがある投資統計は本来、毎月の振れ幅が大きい。月ベースでは16、17年ともに6回も前年割れを記録しており、18年8月以降の安定ぶりは際だっている。

習近平(シー・ジンピン)国家主席は統計の改革に熱心だ。10月からは初めて統計を対象に査察を始めた。地方政府だけでなく中央省庁も対象で、対中直接投資にもメスが入る公算が大きい。

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