あおり運転に厳しい姿勢 司法や警察、社会の要請考慮

2019/12/6 22:38
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東名高速道路であおり運転を受けた夫婦が死亡した事故の控訴審判決で、東京高裁は6日、一審に続き危険運転致死傷罪が成立するとの見解を示した。訴訟手続き上の不備を理由に審理は差し戻したものの、司法としてあおり運転に厳しく臨む態度を改めて示した。警察・法務当局も新たな関連罰則を設ける方針で、危険運転の撲滅を求める社会の要請に応じる姿勢が鮮明になっている。

東名高速の事故で自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪で起訴されたのは石橋和歩被告(27)。高速道路上で被害者のワゴン車をあおって無理やり停車させたところに、後続の大型トラックが追突して事故が起きた。

裁判員裁判の一審・横浜地裁判決は、同法に明文規定のない「停車行為」自体は危険運転致死傷罪に当たらないとした一方、妨害運転や停車、停車後の暴行が密接に結びついて事故を招いたと判断。あおり行為と事故には因果関係があり、同罪が成立するとして懲役18年を言い渡した。

弁護側は「法律に処罰規定がない」などと反発。控訴審でも同様の論点が改めて争われた。

6日の控訴審判決で、東京高裁の朝山芳史裁判長は被告の妨害運転について「危険性が高く、強引に停止を求める意思を示して相手に恐怖心を覚えさせ、あわてさせるものだった」と指摘。結果的に被害車両は、高速上で停止するという極めて危険な手段をとるほかなくなったとした。

一審の事実認定を前提にすれば、妨害運転と事故の因果関係を認めて危険運転が成立するとした判断に誤りはないと結論付けた。

一方で高裁は、一審の訴訟手続きには不備があったとした。裁判員が審理に加わる前に、検察側と弁護側が論点を絞り込む公判前整理手続きで、裁判官が「危険運転致死傷罪は成立しない」との見解を示していたことを問題視。裁判員を含めた議論を経ずにこうした見解を表明したことを「裁判官の越権行為」と批判し、被告側に反論の機会を改めて設けずに有罪としたのは「不意打ちとなることが明らか」と指摘した。

高裁判決は結果的に審理の差し戻しという判断になったが、法律家の間で「法律の拡大解釈の恐れがある」との批判もあった一審の判断を高裁が支持したことは、あおり運転に厳しく臨む司法の姿勢の表れといえそうだ。同志社大の川本哲郎教授(刑事法)は「高裁判決は地裁の法解釈を是認している点が特徴的だ」と指摘。「地裁と高裁が2度にわたって危険運転致死傷罪の成立を認めているといえ、差し戻し審の審理にも影響するだろう」と話している。

■「あおり運転罪」新設へ

警察は危険な「あおり運転」の取り締まりを強化している。

前方の車に急接近するなど、道路交通法の「車間距離保持義務違反」の摘発は2018年に1万3025件あり、前年比1.8倍に増加した。19年1~10月の摘発件数も1万2377件に上り、18年同期比より1504件増えている。

ただ道交法にはあおり運転を直接罰する規定がなく、警察庁は法改正を検討。車間距離保持義務違反など既存の法令の罰則を重くする案もあったが、あおり運転を摘発するには新たな定義が必要として、「あおり運転罪」の新設を決めた。罰則は懲役刑を想定し、1回の摘発で免許取り消しの対象とする。

運転中に他人の車の前に割り込み、停車するといった悪質な行為については、法務省が自動車運転処罰法を改正して危険運転の類型の一つとして加えることを検討している。道交法と自動車運転処罰法の改正案はいずれも来年の通常国会への提出を目指す。

取り締まりの現場では一般ドライバーからの情報提供を促す。岡山県警は11月、危険運転の動画投稿を求める専用サイトを全国で初めて開設。サイトに寄せられた映像をきっかけに、ウインカーを出さずに進路変更して割り込んだとして倉敷市の40代男性を摘発した。

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