米民主、職権乱用に照準 トランプ氏の弾劾決議案

2019/12/6 11:14
保存
共有
印刷
その他

米民主党のペロシ下院議長はトランプ大統領が贈収賄行為をしたと主張したことがある(5日、ワシントン)=AP

米民主党のペロシ下院議長はトランプ大統領が贈収賄行為をしたと主張したことがある(5日、ワシントン)=AP

【ワシントン=中村亮】米議会下院の司法委員会は5日「ウクライナ疑惑」をめぐるトランプ大統領の弾劾決議案の作成に着手した。職権乱用や調査妨害を弾劾訴追の根拠とする方針で、1970年代前半のウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領の弾劾決議案に類似する。ただトランプ氏の不正を示す決定的証拠は欠いており、訴追後の上院での罷免のハードルは高い。

「大統領の行為は我々の建国者の考えに背くものだ」。野党・民主党のペロシ下院議長は5日の声明でこう語った。トランプ氏が2020年の大統領選で優位に立つため民主党のバイデン前副大統領に対する不正調査をウクライナ政府に働きかけたと断定。外国勢力に選挙介入を促した行為は合衆国憲法の理念に反し、弾劾に向けて「我々は行動を起こすしか選択肢がない」と強調した。

司法委は9日に公聴会を開き、決議案の内容を詰める。民主党は司法委を経て、年内に本会議で決議案を採決する構えだ。民主党は下院の過半数の議席を握っており訴追は実現する公算が大きい。大統領の弾劾訴追は史上3人目となる。

弾劾の根拠の一つとするのは職権乱用だ。バイデン氏の不正調査をウクライナ政府に促すため、トランプ氏の指示を受けた側近が首脳会談延期や軍事支援停止で圧力をかけていたと民主党は断定。調査実現のために政権の専管事項である外交政策を悪用したと訴える。

民主党内には政権が職権を悪用しウクライナ政府に「賄賂」を渡そうとしたとみる向きもある。首脳会談開催や軍事支援が「賄賂」に相当するとの見解で、ペロシ氏も政権の行為を「贈収賄」と非難したことがある。憲法には大統領弾劾の根拠に「贈収賄」が明記されている。

職権乱用はニクソン氏の弾劾決議案にも盛り込まれたことがある。ニクソン氏は政権内の情報漏洩などを調査するため秘密部隊「ホワイトハウスの水道配管工」を組織した。同氏は後にこの部隊を政敵の調査にも利用した。民主党は政府機関を政治目的に利用した点でトランプ氏とニクソン氏のケースは似ているとみている。

2つ目の弾劾根拠は調査妨害だ。トランプ氏は弾劾調査を「違法だ」として政府関係者らに対し、議会の調査に協力しないよう呼びかけた。要請に応じる形で、疑惑の渦中にあるマルバニー大統領首席補佐官代行やジュリアーニ大統領顧問弁護士は調査への協力を拒否している。

憲法は議会の役割として政権監視をあげる。民主党はトランプ氏の調査協力の拒否で政権監視の責務が果たせなくなったと主張する。ニクソン氏も弾劾決議案で議会調査を妨げた疑いを問われていた。

民主党は弾劾訴追に踏み切る方針を示したが、トランプ氏の不正行為を客観的に示す決定的証拠が見つかっているわけではない。ウクライナ政府に対する見返り要求をトランプ氏は一貫して否定している。

ニクソン氏の弾劾調査では同氏がウォーターゲート事件の捜査を妨害しようとしたことを示すホワイトハウス内の録音記録が不正行為の決定的証拠となった。ニクソン氏は安全保障に関わるとして記録公開を拒否したが、連邦最高裁判所は公開を認める判決を出した。ニクソン氏は疑惑を否定することが極めて困難になったと判断し、弾劾訴追前に辞任した。

下院で弾劾訴追しても上院でのトランプ氏の罷免のハードルは高い。罷免には上院(定数100人)のうち67人の賛成が必要だ。トランプ氏が率いる与党・共和党から最低20人の賛成が必要になる。共和党支持者の大半は弾劾訴追に否定的で、上院共和党がトランプ氏に反旗を翻す理由は現時点で乏しい。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]